「初心を忘れるな」
ミーティングでの名指しの”喝”が心に響きました。
8月5日のロッテ戦で1軍に昇格した川村友斗選手です。今季は支配下登録された昨年に引き続き、開幕1軍入り。しかし、3試合の出場に留まり、打席に立つチャンスも得られませんでした。4月10日に出場選手登録を抹消されてからは2軍暮らし。そして、5月11日のウエスタン・リーグ 阪神戦で右手有鉤骨を骨折し、手術。2か月を超えるリハビリ生活を送りました。

7月26日の3軍戦で、無事に実戦復帰することが出来ました。3軍では2試合に出場。初戦では2打数無安打、2戦目で待望の復帰後初安打が出ましたが、「全然まだまだ勝負できる状態ではない」と手応えは感じておらず、状態的にはまだ時間がかかりそうな印象でした。

ところが、7月29日から2軍本体に参加することが決まりました。3軍戦を終えたあとのミーティングでのことでした。川村選手に指揮官から熱いゲキが飛びました。

全員の前で名指しのゲキ
「初心を忘れるな。守りに入ったらやられるぞ」
斉藤和巳3軍監督はミーティングの場で、川村選手に名指しで言葉を掛けたのです。
斉藤3軍監督はその真意を明かしてくれました。「(1軍を)経験するのはいいことやけど、怖さも知るやん。川村はいろんなこと考え過ぎているように見えた。3軍は失敗していい場。ここでそういうのを払拭させないといけないのに守りに入ってるように見えたんでね」
個別にではなく、あえて全員の前で話したのも、斉藤3軍監督からのメッセージでした。
育成選手が中心の3軍での2日間が、川村選手にとって”初心”を思い出す貴重な時間になればいいーー。「元々は川村だって育成からのスタートだったんだから」、そう訴えかけました。
斉藤3軍監督は「怖さもあるかもしれんけど、それでも頑張って、前向いて、気持ち出していかんと後手後手になるぞ」とも伝えたと言います。
「気が引き締まりました」
2軍に合流した29日からのくふうハヤテ3連戦(みずほPayPay)で、川村選手は3試合全てで安打をマーク。2、3戦目は共に複数安打でした。不安視していた自身の状態も、安打を重ねるごとに少しずつ自信を取り戻しているように感じました。2軍戦ながら、1軍本拠地開催だったことも、良いイメージを取り戻せた一因だったはずです。

そんな川村選手に、斉藤3軍監督からの言葉をどんなふうに受け止めたのか聞いてみました。すると、「その通りだなと思いました。そんなつもりはなかったけど、気が引き締まりました」と頷きました。
4月に2軍降格した際も、打撃に迷走し、悩んでいました。「今年入って良い感覚がない。模索してるけど時間もない。こんなに感覚が分からないのは初めてです」と焦っていました。もがきながらも、徐々に状態が上がっていき、ようやく1軍昇格に手応えを感じ始めたところでの怪我。精神的にも苦しんだ日々を経ての復帰に、まだ不安や守りに入っているところが知らず知らずのうちにあったのかもしれません。斉藤3軍監督はそんな川村選手の心情をすぐに察したのでした。
「良い時間になりました。感謝しています」と3軍での時間と、斉藤3軍監督からの言葉で川村選手はハッとしました。
約4か月ぶりに再び帰ってきた1軍の舞台。初心を取り戻した川村選手が、気持ちを出して思いっきりプレーする姿を楽しみにしています。