あたたかい応援団の存在からも、その人柄が垣間見えます。
育成ドラフト13位ルーキーの塩士暖投手。石川県輪島市出身。MAX145キロの直球と精度の高い変化球が評価され、地元の門前高校から育成指名を受けました。高校時代にはノーヒットノーラン(6回参考記録)を達成したこともある将来性豊かな長身右腕です。
1か月半ほど、腹直筋の張りのためリハビリ組でトレーニングを行ってきましたが、8月15日の3軍の練習試合(タマスタ筑後)で復帰登板。社会人野球の名門、西部ガスとの一戦で2番手として4回のマウンドに上がり、1回無安打2四球1失点でした。

塩士投手は「ちょっと緊張しました。自分の課題であるツースリーからの粘りが、今日も粘りきれないところはあったんですけど、社会人の強いチーム相手に、自分の自信のある真っ直ぐで空振りを取れたのは1つ自信になりました」と振り返りました。
地元から来てくれた「暖」の”応援団”
まだプロ入りして、実戦は3試合目。これからの投手ですが、既に熱烈な応援団にエールを送られています。
復帰登板となったこの日、タマスタ筑後のスタンドには「暖」と手書きのうちわや応援グッズを大事に携える4人の”応援団”の姿がありました。

なんと、プロ野球選手という夢を叶えた教え子の姿を一目見ようと、石川県輪島市から駆け付けた塩士投手の小中学校時代の先生方でした。小4と小6の時の担任の先生と、中学で各教科を持ってくれていた先生たちが揃って応援に来てくれたというのです。先生たちは「かわいい子なんですよ」と塩士投手への愛情が滲み出ていました。
塩士投手の通っていた輪島市立大屋小学校は、当時1学年25人程。「めちゃくちゃ人数は少なかったので、みんな仲が良いです。こうして先生方がわざわざ福岡まで来て下さることもなかなかないので、本当に良い先生たちですね」と笑みがこぼれました。先日は、家族も筑後に練習を見学に足を運んでくれました。「周りはあたたかい人たちばかりです」と感謝します。
試合後、先生たちが塩士投手を”出待ち”し、嬉しい再会を果たしました。ドラフト指名を受けた後、母校に顔を出した時以来の再会でした。「めちゃくちゃ嬉しいです。自分が悪ガキだった時から見てもらっていた先生たちなので」と懐かしみます。
「良かったね」「大きくなったね」と興奮気味に労われたり、「サインもらうことばかり考えてたら、差し入れ忘れちゃった。また次来るね」と笑わせてくれた先生たち。サインを書いて、写真を一緒に撮って、かけがえのない束の間の時間を過ごしました。

充実したルーキーイヤー
6月12日の独立リーグ・信濃との3軍戦で、プロとして初めてのマウンドに上がると、1回無安打無失点。初登板で自己最速を更新する147キロの直球で初奪三振。しかも、直後に味方が点を取り、非公式戦ながら、初登板で”初勝利”を挙げました。
しかし、その後は腹直筋の張りで大事をとってリハビリ組に移管されました。最初はもどかしさを抱きましたが、「リハビリ組にいなかったら出来ない経験だった」と約1か月半、濃厚な時間を過ごしました。
球団統括本部付アドバイザーの和田毅さんからマンツーマンで指導を受けたり、同時期にリハビリ組で過ごした柳田悠岐選手、今宮健太選手、栗原陵矢選手ら主力選手たちとライブBPで対戦する機会を得るなど、貴重な経験を積みました。先輩たちからは「『真っ直ぐにめちゃくちゃ癖があって、動いたり、ベース板の上が強い』みたいなことを言って頂けて、そこはすごく自信になりました」と嬉しそうに振り返りました。

リハビリ期間でしっかりスピードを伸ばせたり、 今まであまり使えなかった変化球にも磨きがかかってきたりと確実に進化を遂げているところです。ライブBPでは、大台の150キロまであと1キロに迫る149キロをマーク!入団時から既に球速を4キロも更新しています。

日々、成長が止まらない塩士投手。1年目の目標は「プロで戦える身体作りや技術面。自分の自信のあるボールで空振りが奪えるようにストレート磨いていきたい」と語りました。春季キャンプ時には「ドラフトでは1番最後の指名で悔しかったので、普段の練習では常に1番を目指しています」と柔らかい表情の奥に滲む強い負けん気を覗かせていたのが印象的でした。
たくさんの人に愛され、応援されている塩士投手。「暖」の”応援団”の存在を更なる力に変えて、プロの世界でどんな成長を見せてくれるのか、楽しみにしています。