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復帰登板で見えた人柄

上杉あずさのスコアブック
公開日:2025.07.11
復帰登板で見えた人柄

4月に国指定難病「黄色じん帯骨化症」と「左肘」の手術を受けていた濱口遥大投手が7月10日の3軍戦で実戦復帰しました。

濱口投手は、昨オフに横浜DeNAベイスターズから三森大貴選手との交換トレードでホークスに移籍。開幕2軍スタートで、ファームで腕を振っていましたが、4月に国指定難病の「黄色じん帯骨化症」と診断されました。その手術と同時に、左肘関節炎にともなう左肘関節クリーニング術も行い、競技復帰まで3〜4か月と診断されていました。(「黄色じん帯骨化症」からの復帰の目処は2~3か月とされ、同じ時期に手術することで早期復帰を目指しました)

ところが、その見立てより早くマウンドに帰ってきた濱口投手。四国IL・愛媛マンダリンパイレーツとの3軍戦の8回に登板し、1回1安打無失点。最速は142キロでした。

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「1試合も無駄にできない」という覚悟

「どういう感じかなという緊張感はありましたけど、スピードは自分が思っているより出ていて、久しぶりの登板にしてはまずまずかなって感じですね。まずはMAX140くらい出ればいいかなと思っていたので、(142キロ出て)体の状態としてもいいですね」と一安心していました。

さらに、「今、脱力してからフォームとのギャップっていうのを意識して投げているんですけど、それでこういうスピードが出てくれれば、怪我前よりボールの質とかベース板での強さも出していけるかなと思いました」と手応えも感じています。無事に復帰するということだけではなく、しっかり進化して戻るために取り組んできたことが伝わってきました。

「時期も時期なので、1試合も無駄にできないですし、とにかく全部の試合がアピールになると思うので。もう少しリハビリ過程の登板にはなるけど、内容はしっかり自分の求めるものを高く設定して、1つも取りこぼさないように、最速で1軍で投げれるように準備したい」と濱口投手は危機感を持ちながら、先を見据えていました。

早期復帰はそんな気持ちの表れでもあるでしょう。「肘も背中も2人の先生が丁寧に手術してくれましたし、リハビリ過程でもすごく気にして頂きながらやれたので」と執刀医やリハビリスタッフに感謝しました。

「黄色じん帯骨化症」に関しては、「僕は症状が出る前に、元通り生活できる段階でオペをしてもらった。野球は多少、技術的にどうしても出来なくなる動きはあったんですけど、生活してて感覚が鈍いとかは感じる前だったので、検査して早めに見付かって本当にラッキーでした」と説明してくれました。さらには「手術前に比べて間違いなくパフォーマンスは上がるなっていうのは先生とも話しています」と頷きました。

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移籍して生まれた新たな信念

順調な復帰には一安心ですが、やはり移籍してきてすぐの離脱、手術。精神的に苦しかったのではないかと思いますが、リハビリ生活を送る濱口投手はすごく前向きに見えました。

そのことについて問うと、濱口投手は「ホークスのリハビリ陣がすごく明るいキャラクターの選手が多くて、みんないろんなものを抱えながらでも、毎日その日できる事をやっている姿を見ていたので、そこに対する不安はあんまり無くて。みんなで声を掛け合いながら、多少ふざけ合いながら、いいリハビリチームでした」と笑顔で振り返りました。

森山良二リハビリ担当コーチ(投手)は、「濱口はすごく真面目だよ。実績もあるのにベテランっぽくない、謙虚で真面目で明るくて。ウエート場でもコツコツやってるよ」とその姿勢に感心していました。

また、後輩にも優しく接する姿が印象的でした。ベイスターズ時代は、後輩に自分から声を掛けることは少なかったと言いますが、「ここ数年は、年齢もプロキャリアも重ねてきて、自分より若い選手も多くなってきたので、できるだけいろんな選手と話をしたり、挨拶もしっかり顔を見てするように意識はしていました」と明かします。

復帰戦でも、マウンドに向かう途中、若鷹たちに「よっしゃ行こー!元気だして!」と声を掛けていました。試合後の3軍ミーティングにも自ら参加。本来は、リハビリ組からの参加選手扱いのため、自身の登板を終えたら、帰っていいはずなのに、濱口投手は最後まで3軍の輪に加わり、若手とのコミュニケーションを取りました。

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「3軍には僕のこと全然分からない選手も多いと思うので、できるだけ自分から話しかけたり、顔を合わすようにはしましたね」と周りへの気遣いも惜しみません。

というのも、ここには濱口投手なりの信念がありました。「ファン、記者、若い選手にも僕がどんな取り組みをしてどんなボールを投げるのかって言うのは見られていたと思う。内容もそうですし、練習している姿勢とか、見ている人は見ているので。リハビリだから自分の好きなように自分勝手に練習してっていうの、僕はあんまりどうなのかなって思うタイプで。ベテランになればなるほど、人に見られると思う。もしかしたら自分のことを参考にする人もいるかもしれないし。怪我する前からそういうことは考えていたので、これからも気をつけながら」と視野広くもストイックに自身と向き合う濱口投手は、すごく頼もしいです。

「まだ実戦復帰しただけ。ここがゴールとも思っていないので。ここで感慨に耽けるようなことは全くなくて、まだまだ先を見てやらないといけない。1軍で投げてこそ、復帰って言えるものだと思うので、そこは絶対今年したいと思います」。選手としても、人としても、さらに魅力的になっていく濱口投手が1軍のマウンドに立つ姿を心待ちにしています。

Writer /

上杉 あずさ『班長』