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思いはただ1つ…渡邉陸は「優勝したい」  

上杉あずさのスコアブック
公開日:2025.07.21
思いはただ1つ…渡邉陸は「優勝したい」

プロ野球は今日で前半戦が終了。ホークスは開幕から怪我人が相次ぐなど苦しい戦いを強いられました。一時は最下位にも沈みましたが、総力戦で首位日本ハムに2ゲーム差の2位まで這い上がってきました。今季最長6連勝という素晴らしい形で前半戦を締めくくりました。

逆転リーグ優勝に向けて、後半戦1軍で見たい選手は山ほど居ますが、彼はきっとチームにとって大きな存在になるのではないかーー。そう期待している選手がいます。

渡邉陸捕手です。

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プロ7年目の今季は、初の開幕1軍入り。1軍で24試合に出場し、打率は.222。スタメンマスクを被ったのは12試合でした。6月20日に1軍の出場選手登録を抹消され、翌日から2軍戦に出場していますが、今季の渡邉捕手は本当に輝いていました。

彼の喜んでいる顔を見ると、勝利がより一層嬉しくなったし、ホークスへの思いが増しました。あらゆる面で貢献度の高さが印象的でした。

サヨナラ勝利の立役者

特に、ファンの皆さんの心にも刻まれているシーンだと思いますが、チームがサヨナラ勝利を収めた時には、誰よりも早くヒーローの元へ駆け寄って行きました。

渡邉捕手が1軍登録中の3度のサヨナラ勝利——。
5連敗中で苦しい状況だった5月2日のロッテ戦。川瀬晃選手がサヨナラ打を放つと、誰よりも早く川瀬選手に抱き着き、喜びを爆発させました。同18日の楽天戦では、サヨナラ打を放った牧原大成選手を、同28日の日本ハム戦ではヒーローの周東佑京選手を1番乗りで抱きかかえました。チームメイトの活躍、チームの勝利を心から喜んでいることがひしひしと伝わってくるシーンでした。

勝利の瞬間だけではありません。チームメイトが本塁打を打った時や点が入った時など、いつだって全力で喜んで盛り立てます。ベンチからでも流れは作れるし、熱い鼓舞はチームの士気を上げてくれるはず。試合に出ていない時でも、渡邉捕手についつい目が行くのはそういう姿が輝いているから。

4月途中からチーム内で流行した『アジフライポーズ』の考案にも携わりました。チームがなかなか波に乗れない日々、「なにかやりましょうよ」と言い出したのも渡邉捕手だったとか。MLBドジャースが大谷翔平選手出演CMから生まれた「デコルテポーズ」で盛り上がっているところにインスピレーションを受け、ホークスでは山川穂高選手出演の「魚屋三陽アジフライ」CMから発案した『アジフライポーズ』を。周東佑京選手や栗原陵矢選手らと共に新ムーブメントを起こしました。

ただ、今季初スタメンとなったのは4月10日。決して最初は出場試合数も多くありませんでしたが、その時期に自らチームを盛り上げるために提案できることがスゴイし、簡単なことではないと思います。それだけチームを何とかしたいという思いの表れでしょう。

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周囲も認める熱心な姿

栗原選手も渡邉捕手の熱さを感じていました。「良い姿で野球していますね。いい意味で、喜怒哀楽がよく出ています。ベンチも隣なのでよくわかります」と頷いていました。喜びも悔しさも素直に溢れ出る感情は周囲にも刺激を与えていました。「陸はロッカーでも盛り上げてくれて、場を和ませてくれるし、いい空気にしてくれます」と栗原選手はその影響を感じていました。

ムードメーカー的な役割も印象的でしたが、投手とのコミュニケーションについても、スタメン時のみならず、控えている際にもベンチで投手に声を掛ける姿が目に入りました。髙谷裕亮バッテリーコーチも「ピッチャーと話している感じを聞いていても、陸は今年よくピッチャーとコミュニケーション取れているね」と認めていました。渡邉捕手は「特に先発投手は、移動の時とか別行動になることも多いので、なるべく話し掛けられる時に話しておきたいなと意識はしています」と語っていました。

試合に出ていても、出ていなくても、目が輝いていました。何度も言いますが、決して簡単なことではありません。自分の結果が出ていないとき、試合に多く絡めないとき、選手としては悔しいに決まっています。でも、渡邉捕手はどんな状況でも輝いて見えたのです。

見つめる先はただ1つ、”優勝”への思い

そんな姿が素敵だなと思い、胸の内を聞いてみたことがありました。すると、渡邉捕手からは迷いなくこんな言葉が返ってきたのです。

「優勝したいので」

心から滲み出る熱いものがありました。渡邉捕手は「1軍にいると毎日楽しいし、自然とモチベーションも上がるし、ずっと1軍にいたいなと思うんです。誰かが本塁打を打ったら、打った人も嬉しそうだしこっちも嬉しくなりますね。もちろん、『いいな。自分も打ちたいな』とは思いますけど、とにかく優勝したいし、勝ちたいので」と真っすぐに語ってくれました。

現在は、2軍暮らしが続きますが、この時の話をもう一度持ち掛けてみました。すると、「もちろん、優勝したいですし、(1軍で)試合に出たいです」と頷いた渡邉捕手。1軍の試合は2軍戦の時間と被っていても、必ずチェックしているそうです。強い思いが伝わってきます。開幕から1軍という第一線で優勝を意識し続けてきた分、2軍生活になり、もどかしさや物足りなさは感じていました。それでも、新たに芽生えた感情もありました。

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それは、共に2軍で頑張っている投手陣と「一緒に上がりたい」という気持ちです。「ピッチャーも抑えないと上がれないので、絶対抑えてやろうって思って受けています」。中でも、「宮﨑(颯)とか支配下期限も近いし、絶対抑えたろうって特に思いますね」と育成出身だからこそ、必死にアピールを続ける育成選手にも寄り添い、共に上を目指すという新たな思いも強く抱いていました。

こんな熱いハートの持ち主は、リーグ優勝、日本一を目指して戦うチームにとって、必ず大きな力となるはず。再び1軍に昇格し、渡邉捕手の笑顔と熱い姿がもっともっと見られるシーズンになりますように。

Writer /

上杉 あずさ『班長』