ホークスは21日、ウエスタン・リーグ阪神戦に7-3で敗れました。これをもって、ファーム本拠地のタマスタ筑後で行われる今季の公式戦が全て終了しました。
「最終戦、筑後のファンの皆さんに勝利を届けたかった」と悔やんだのは松山秀明2軍監督。試合後には、2025シーズン最終戦セレモニーが行われ、松山2軍監督が応援に駆けつけたファンの皆さんに1年間の感謝を述べました。
さらに、「ウエスタン・リーグはまだ優勝が決まっていません。残り6試合です。チームの大きな目標として、リーグ3連覇できるように、ここにいる全員で残り試合頑張っていきたいと思います」とビジターでの残り6試合にも「筑後からの声援を遠征先に送ってください」と呼びかけました。

“2軍の優勝”に込める意味
松山2軍監督が言葉にした「優勝」への思いーー。改めて、その真意を伺いました。
「優勝する、できるっていうことに関しては、選手たちが僕たち首脳陣の起用に応えてくれて、成績を残してくれると、自動的に試合は勝てることが多いです。なので今、優勝を狙える位置にいられるのは、本当に1年間選手たちが僕たちの起用に応えてくれた結果。選手には感謝したいです」とまずは選手たちの奮闘を称えました。
実は9日からの中日との3連戦で、「優勝するぞ」と選手たちを鼓舞したという松山2軍監督。ところが、「あまり効果的ではなかったです」と苦笑い。
昨季も優勝が間近になると、松山2軍監督は選手たちに優勝を意識させました。「去年はすごく効果的で、力を出せる選手が多かったんですけど。今年に関してはプレッシャーをかけすぎると、そのプレッシャーに押される選手もたくさんいるので。だからここからは言葉には出さないです」と選手たちに求めるものは”普段通り”の戦い。
「この1年間やってきたことをやってほしい。これは選手のミーティングでも伝えたんですけど、勝つために良い成績を残して欲しいわけではない。良い成績を残すことによって、選手個々の評価が上がります。自分のために良い成績を出してくれ、と僕の方からはアプローチしています。勝つ負けるに関しては監督の責任。選手がやれることは、与えられたチャンスで僕たちにアピールして、1軍に行けるように成績を残していく。単純明快なことでいいと思うので。その結集をチームの勝利に結びつけていくのは僕の仕事」と語ります。
ファンのために勝利を届けたいのは当然ですが、選手個々は自分のためにプレーした結果が勝利、優勝に繋がるということ。松山2軍監督は、似て非なるものであることを強調しました。
それぞれが思う”優勝”の位置づけ
たしかに、選手たちにウエスタン・リーグ優勝についての考えを問うと、良い意味で強いこだわりを感じませんでした。
イヒネ イツア選手は、昨季も試合経験を積みながら優勝を経験しました。今季はチーム最多の打席数を重ね、多くの試合で勝利に貢献しました。中心選手としてプレーすることで、優勝への意欲も増しているのではないかと思い、本人に問うと、「優勝とかそういうところは上手い人たちや監督に任せているので、僕が考えるところでははい。優勝のためにとか言える選手じゃないので、自分のことを常に頑張ります」と語りました。

秋広優人選手は「ファームはチームというより個人なので。松山さんもそれぞれがやるべきことをやるようにと言われていたので」と冷静に見つめていました。

宮﨑颯投手も「優勝は気にしてないです。それより、どうやったら1軍に上がれるのか、自分のことをやらなければいけません」と必死でした。
一方で、藤田悠太郎捕手と大友宗捕手のように「優勝したい、してみたい」と初々しく語る選手も。

“優勝”がもたらす力
小久保裕紀監督が2軍監督2年目だった一昨年とは、全く雰囲気が違います。先日、現役引退を発表した森唯斗投手(DeNA)や奥村政稔3軍ファーム投手コーチが先頭に立ち、2軍とはいえ、優勝を強烈に意識して一致団結した姿はファンの皆さんの記憶にも残っているのではないでしょうか。その時の雰囲気もとても魅力的で、”優勝”を意識する中で自分の力を発揮するという大きな経験を積んだ若鷹も多くいました。
一方で、今年はそれぞれが地に足をつけて、自身のレベルアップに励む姿が印象的です。当時のような絶対的リーダーが居なかったり、チーム状況や選手たちの置かれた立場も異なるため、雰囲気は違って当然。だからこそ、松山2軍監督も現チームの選手たちには、「自分のためにプレー」するように伝えたのでしょう。

終盤、2軍で復帰した柳田悠岐選手の存在も、チームの士気を上げてくれました。松山2軍監督にその影響について伺うと、「やっぱり明るいです。明るいし、元気だし。良い意味で、少年のような野球選手。大袈裟でもなんでもなくて、僕は本当に柳田がチームの宝だと思っています」と力強く語りました。
柳田選手がいるだけで、ベンチも明るくなり、盛り上がっているのは取材をしていてもヒシヒシと感じました。
“チームの宝”は優勝を請け負うべく1軍に復帰しました。2軍の選手たちには柳田選手から受けた好影響をそれぞれの活躍に繋げて欲しいですね。

何かを成し遂げるのに悪いことはないはず。ファームとはいえ、”優勝に貢献した”ことが自信に繋がったり、その上のステージに這い上がるための糧になるのではないでしょうか。
1、2軍共に”最高の景色”を見られますようにーー。