「THE LAST GAME 2025」──。
現役引退を決断したプロ野球選手のセレモニーを兼ねた“特別試合”が6日、北九州市民球場で行われました。
応援してくれたファンや支えてくれた家族に、最後の雄姿を見せる場所として、スカイA主催、日本プロ野球OBクラブ、日本プロ野球選手会の協力の下で開催されました。
4回目を迎えた「THE LAST GAME」。今年は23選手が出場しました。「EAST HOPES」と「WEST DREAMS」に分かれて、7回制で対戦。昨年まで2シーズン、福岡ソフトバンクホークスでプレーした古川侑利投手も出場しました。

試合前、爽やかな表情でグラウンド入りした古川投手。現役引退から約1年が経ち、ひと回り小さく感じたユニフォーム姿。「10キロ痩せましたよ」と言ってくしゃっと笑いました。
思いっきり楽しんだ特別な野球
古川投手は、「WEST DREAMS」の「7番・二塁」でスタメン出場。登板時以外は野手としてプレーしました。有田工業高校時代、エースで4番だった身体能力を生かし、守備では軽快な動きを見せました。


4回に待ちに待った登板機会が巡ってきました。久し振りのマウンドへ上がると、なかなかストライクが入りません。連続四球や本塁打で1回2安打4失点と苦しい内容でしたが、マウンド上の古川投手は笑顔。用意してもらった特別な舞台で、思いっきり野球を楽しむ姿が印象的でした。


この一戦に挑む”意味”
「THE LAST GAME 2025」出場のオファーが来た際、「1日くらい考えたけど、自分の中ではすぐ出たいなと思いましたね」と頷きます。
現役時代、常に野球と真っすぐに向き合ってきた古川投手。思うような結果が出なくても、たゆまぬ向上心と探求心でレベルアップに励む姿には何度も心打たれました。
昨秋、道半ばで告げられた自由契約。現役続行への思いもあった中で、終止符を打つことになったプロ野球人生でした。
だからこそ、この試合に掛ける特別な思いがありました。
「最後って分かった上で見に来てもらえる機会というのはなかなかないので。家族や同級生、ファンの人たちもたくさん来てくれて、みんながいっぱい応援してくれる中で投げることにすごく意味がありました」と噛み締めました。

強く心掛けたのは、「野球を楽しんでいる姿を見せること」——。
「振り返れば、プロ野球生活はやっぱり苦しいことの方が記憶に残っているけど、そういった姿のまま終わるより、試合の中でも笑いながら、全力で楽しんでいる姿を見せたかった」
現役ドラフトで2022年オフにホークスへ。移籍1年目はなかなか登板機会に恵まれず、翌年は育成契約に。支配下復帰を目指し、奮闘し続けましたが、上手くいかないことが多かったホークスでの日々。昨季終盤はマウンド上で首を傾げる姿もありました。
大好きな野球だからこそ、応援してくれた家族や友人、ファン、自分自身も、楽しい思い出で締め括りたい──。そんな思いで、この一戦に挑みました。

「マジで全力で投げにいって、『やべぇ!これ全然ダメだ』ってなって、めっちゃ軽く投げて、バグったっす」と頭を掻いた“最後のマウンド”でしたが、心から野球を楽しみ、応援してくれた方々にも笑顔を届ける、かけがえのない時間になりました。
意図しない形ではありましたが、この試合唯一の本塁打を浴びるなど注目を集めたことで、予定より長い時間マウンドに立ってくれたのは、“古川応援団”的にはちょっと嬉しかったり・・・(笑)

いつの日か叶えたい夢
4球団を渡り歩いた波乱万丈なプロ野球生活。昨年12月に現役引退を決意し、今季からホークスの1軍アナリストとして“第2の人生”を歩み始めました。
「学ぶことがすごく多くて、まだまだだなと思いました。さらに勉強して、選手のためにサポート出来るようにやっていきたいです」と新たな道にやりがいを感じた1年を振り返りました。
そして、いつの日か叶えたい夢──。
「いつか指導者になりたいという思いはブレずにあります。ありがたいことに来年もアナリストとして働かせていただくので、もっとデータを扱えるように学ばないといけないし、そこを磨いて自分のものにしてこそ、その先が見えてくると思う」と古川投手は大きな夢を掲げながら、アナリストとしての強い決意と覚悟を口にしました。
選手としての最後の日を終えた古川投手は、「いやー、マジで楽しかった」と余韻に浸りました。未来に繋がるマウンドを経て、たくさんの感謝を胸に、次の夢へと力強く歩みを進めました。
