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先発転向で目指すは”上茶谷NEO”

上杉あずさのスコアブック
公開日:2025.08.07
先発転向で目指すは"上茶谷NEO"

「内心、ちょっと嬉しかったです。『あ、先発か!』って」と笑ったのは上茶谷大河投手。

昨オフの現役ドラフトで福岡ソフトバンクホークスに加入した右腕です。2018年ドラフト1位で横浜DeNAベイスターズに入団し、プロ1年目には4勝を挙げました。先発、中継ぎの両方を経験してきて、23年以降は本格的に中継ぎ。昨オフ、メキシコのウインターリーグに参戦し、再度先発転向を目指して奮闘してきたところで、移籍が決まりました。

ホークスの入団会見では「先発ローテーション入り」を目標に掲げましたが、まさかのキャンプイン直後に怪我。右肘を手術し、ほろ苦い新天地でのスタートとなりました。

それでも、底抜けの明るいキャラクターでリハビリ組に”笑いの治癒力”をばら撒き、周囲を元気にしながら、自身も順調に回復。

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5月18日、ウエスタン・リーグ くふうハヤテ戦で”移籍後初登板”。ロングリリーフができる中継ぎ投手として、2軍で登板を重ねてきました。早期の戦線離脱で、当初の目標であった先発とはいきませんでしたが、「なんでも屋です。ニーズに合わせて何でもやります」と”便利屋”として戦力になろうと意気込んでいました。

舞い込んできた先発チャンス

しかし、7月27日の中日戦(ナゴヤ)で移籍後初先発する機会がやってきました。投手コーチに「次70球くらい行く?」と声を掛けられた上茶谷投手は「え!先発っすか?」と目を丸くしたそうです。

「まだ僕も疑ってます。先発か中継ぎか」とおどけながらも、「やるからには勝ち取りたいですね」と小気味いいトークの中にも決意が滲みます。

元々は1イニングで一気にパフォーマンスを発揮するよりは長く投げる中で試合を作っていく方が得意なタイプ。

「先発やった中で、中継ぎで必要とされたら、中継ぎで頑張るし、言われたところでやるのがプロなので。僕のワガママは言わないけど、勝ち取りにいくというか、先発で行けるんだなとは思わせたいですね」と上茶谷投手。どんな役割でもチームの戦力になるために腕を振る覚悟が第1にありますが、先発としてチャレンジ出来ることに嬉しそうな表情を覗かせたのが印象的でした。

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ただ、久しぶりに上がったまっさらなマウンドでは、気合いが入りすぎたようで「空回りしましたね。力み倒しました」と苦笑いでした。「次はもう少し楽なピッチングが出来ると思うので」と2度目の先発機会だった2日の広島戦(由宇)では、4回1/3を投げて、2安打7奪三振、無失点と好投しました。

感じるやりがいと滲む充実感

「僕は球種が多いので、中継ぎの時は使っていなかった球種をこれからは使っていこうかなと。中継ぎでは3つくらいだったけど、5〜6球種あります」と話していた上茶谷投手。今季は大津亮介投手と会話する姿をよく見掛けていました。大津投手と言えば、多彩な変化球を操ることでもお馴染みですが、変化球について語り合うことも多かったようです。

「そうなんですよ。大津からほんまに変化球は勉強しました。『これどうやって投げたらいい?』とか。あいつは種類で言ったらえげつないくらい持ってるんで。僕はそこまでは無いけど、(変化球を操る)楽しさは分かるので。カーブでもスピード遅めたり、スライダーのスピード速めたりっていうのが出来る面白みが先発にはありますね」と熱を込めました。まだ先発として投げるようになったばかりではありますが、既に充実感が滲んでいました。

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「上茶谷上げようとはならない」 受け止める現実と目指す先

底抜けに明るくて面白い、非凡なキャラクターで、常に楽しそうな姿が印象的な上茶谷投手ですが、もちろん、2軍暮らしが続く現状にもどかしさを感じていないわけがありません。

「そこは僕にコントロールできるところじゃない。結果を出すだけ。呼んでもらえるように頑張りたい。それ以外ないです。今はまだ呼んで貰えないです、能力的に。僕が監督コーチでも、今のピッチングでは上茶谷上げようとはならないので」と冷静に現実を見つめ、レベルアップに努めています。

ホークスに移籍してきてからは、ウエートトレーニングにも熱心に取り組み始めました。「ホークスの中継ぎが異次元なので」とファームであっても高出力投手の多さに刺激を受けていました。「僕のMAXは151なので物足りないですね」と、トレーニング面でも様々な挑戦を重ねているところです。

向上心を持って語る上茶谷投手に、「ここから”NEW上茶谷”を見せてくれるんですね」と声を掛けると、彼はこう言いました。

「NEOかみ……いや、上茶谷NEO?!  『上茶谷NEO』で行きたいと思います」。そう高らかに宣言したのでした。

単に「新しい」ではなく、「革新」や「復活」の意味も含む”NEO”ーー。少し深読みかもしれないけれど、レベルアップした上茶谷投手が、チームに新たな彩りを添えてくれる日を心待ちにしています。

Writer /

上杉 あずさ『班長』