鉄壁のリリーフ陣に割って入るべく、虎視眈々と爪を研ぎ続けています。
昨オフ、甲斐拓也捕手のFA移籍に伴い、読売ジャイアンツからホークスに移籍してきた伊藤優輔投手。社会人の三菱パワーを経て、2020年ドラフトで巨人から4巡目指名を受けてプロ入り。1年目オフにトミー・ジョン手術を受けましたが、長いリハビリを経て昨季、2軍で40試合投げ、4勝0敗14セーブ、1軍で8試合に登板して防御率1.04と頭角を現しました。今季に期待を寄せられていたところで、福岡に活躍の場所を移すことになりました。
新天地で試行錯誤した”先発挑戦”
ホークスでは、開幕から2軍で先発として腕を振ってきました。プロで初めての挑戦は、なかなか思うような成績が残せませんでした。7試合で4連敗含む1勝5敗と苦しみました。5月20日のウエスタン・リーグ中日戦(タマスタ筑後)での先発を最後に、以降は中継ぎ起用されるようになりました。
すると、そこから右肩上がりに成績を残しています。「元々去年からやっていたのもあるし、ショートイニングでガッと上げる方が、自分としてはやりやすさがあります」と中継ぎは自身のスタイルに合っているようです。

“先発挑戦”は試行錯誤の連続でした。「先発だとどうしても、1イニング1イニングのつもりで投げてはいましたが、知らず知らずのうちに先のことを考えて、セーブしてしまっていたのかもしれません」と振り返ります。
伊藤投手は、「最初から長いイニングのイメージで投げてしまうと、どうしても先を読んでしまって。もう1巡対戦するなぁとか、配球面も含めて。それで力を発揮出来たらいいんですけど、そこまで器用じゃないので」と悩みました。
そんな時、倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)と話をする機会がありました。伊藤投手は「どうしても先のことを考えちゃってセーブしてしまいます」と素直に上手くいかない点を相談しました。すると、倉野コーチは「1回ショートイニングやってみるか」と提案してくれたそうです。「筑後に来られた時はいろいろ会話してくれますし、コミュニケーションをとってもらえる」と柔軟に対応してくれた首脳陣に感謝しました。

10試合連続無失点とアピール中
そこからしっかり結果を残している伊藤投手。6月に移籍後初めて1軍に昇格すると、中継ぎとして2試合に登板し、いずれも1回無失点。ファーム再調整となってからも10試合連続無失点を継続中です。
連続無失点の10試合中、9試合で複数奪三振という結果にも持ち味が表れています。移籍後最速は154キロ。伊藤投手は「真っ直ぐでしっかり空振りやファウルがとれているのが、自信を持てる部分。それが出来ているから、変化球も生きてきます。真っ直ぐが通用しているのが1番大きいです」と手応えを感じています。
先発としては一度躓きましたが、挑戦したことで得た収穫もありました。「先発をやった中で、カーブがいい感じで投げられるようになりました。意外と使えるなというのが収穫です。中継ぎになってからも、それがいいアクセントになっています」と頷きました。

再認識できた自身のスタイルと、新たに見つかった”個性”。伊藤投手は「上のピッチャーも層が厚いし、みんな球も速い。何かしら個性を出していかないといけない。真っ直ぐだけじゃなくて、他の変化球もどう見せながら投げていくかって言うのは、もちろん軸は真っ直ぐになりますが、そこは去年以上に意識しながらやっています」と新天地で自らの居場所を掴むため、静かに決意を込めました。
心強かった愉快な仲間たちの存在
新天地での生活にもだいぶ慣れてきました。「最初、手探り状態で投げていたし、野球に集中しきれていない部分もあったのかもしれないなと今振り返ると思います。気を遣ったりしてましたね、かみちゃと違って(笑)」と同じく今季からホークスに移籍してきた同学年の上茶谷大河投手の名前を挙げ、笑みを浮かべました。
大学時代から同一リーグでプレーしていたこともあり、長らく顔見知りだった上茶谷投手。「あいつの存在はデカかったですね。こんな深くは関わったことはなかったですけど。でも、あいつも根は真面目なんで。根っからの馬鹿じゃなくて、ああいうキャラを演じていますね、絶対。本当はすごく頭いいです。上茶谷と岩井(俊介)は」と新天地で出会った愉快な仲間たちの存在にも助けられたと感謝していました。

「必要とされる時に1軍で活躍できるように、怪我せず、今の状態を維持していきたい」と伊藤投手。淡々と語りますが、内に秘めたる熱い志を感じます。日本一奪還を目指すホークスの新たなピースになって欲しい、とても楽しみな存在です。