感謝を噛み締めて、”背番号16″がマウンドに帰ってきました。
右肩を痛めてリハビリ調整が続いていた東浜巨投手が8月16日のファーム・リーグ阪神戦(タマスタ筑後)で実戦復帰しました。
先発して、3回3安打無失点。無四死球、1奪三振。最速は147キロでした。「荒れたボールがなかったので、それが1番です」と3か月ぶりの登板を無事に終え、安堵した東浜投手。まずは何より「3回マウンドに上がれたっていうのが、僕にとっては内容よりもそこが大きい」と振り返ります。


約3か月実戦から遠ざかると、ベテランであっても、試合に向けて仕上げていくことは簡単ではありませんでした。「自分の思っている動きがまだまだできない」ともがく時間もありました。
「元に戻すっていうよりは、さらにパワーアップした姿を見せないといけない」とコツコツとトレーニングを重ねました。


プロ14年目のベテランも、今年で36歳。様々なことを思えば思うほど、「なんでここで…」とリハビリ組にいる自分に歯がゆさを感じてきました。
「なかなか春先から思うようなパフォーマンスが出せていなかったので、そこのもどかしさがあった上での今回の怪我でした。でも、こんなに(リハビリが)長くなるとは思っていなかった」と振り返ります。
シーズン中に3か月もの間、マウンドを離れたことは、これまでのプロ生活でありませんでした。「これだけ苦しいのは初めてかもしれない」とまで打ち明けます。
だからこそ、復帰戦も「どちらかといえば、(楽しみより)不安の方が大きかった。このマウンドにまた立てるっていうことが、本当にありがたいなと思いながら。まだゴールじゃないんで、上を目指していくのは当然なんですけど、まずは試合に入れたことに感謝したい」と噛み締めたのです。

「切り替えるのは難しかった」…苦しんだ”刺激のない日々”
東浜投手に「リハビリ期間中、何か刺激になったことはありましたか?」と尋ねると、「いや、語弊があるかもしれないし、言い方がちょっと強いかもしれないですけど」と配慮した上で、こう続けました。
「刺激がないんですよ、リハビリって」
数々の優勝争いを経験し、2017年に最多勝、2020年には開幕投手を務め、2022年にはノーヒット・ノーラン達成など、1軍のハイレベルな戦いの中で生きてきた右腕にとって、「刺激がない」ことが、いかに大変なことだったか。
「この環境の中で、どういうモチベーションを持って、どんな目標を持って過ごしていったらいいのかなっていうところが1番大変でした。やっぱり試合があることで、プレッシャーを感じるし、そういうのは自分たちにとって必要なものですし。それが絶対に原動力になっているから。結果を出さなきゃいけないプレッシャーの中での刺激っていうのが、急にポンってなくなったんです。それが最初はキツかったですね。どういうモチベーションでリハビリしようかなって。すぐに切り替えるのは難しかったです……」
リハビリ組移管後、現状について多くを語らなかったのも、そんな心境からでした。
復帰が近付くと、徐々に笑顔が見られる日が増えました。そして、復帰戦では求めていた”刺激”を再び感じることができたのです。
「1日ずっとフワフワしていた」と登板を前に、落ち着かなかったという東浜投手。初回に一死1、2塁のピンチを背負った場面では、二併殺に打ち取り、清々しい表情を見せました。「久しぶりにマウンドの緊張感っていうのを味わえたのでよかった」と頷きました。


「感謝足りなかったな、俺」…立ち返れたリハビリ生活
リハビリ生活の中で改めて感じたのは、”感謝”。
「いろんな人に助けてもらって、こうやって野球ができているんだと。一歩引いて見た時に、トレーナーさんが毎日やってくれる。自分たちも気持ちが常に一定ではないし、しんどい時もあれば、後ろ向きな時もある。そんな時でも、同じように気を遣って接してもらいました。助けられてるな、ありがたいなと。忘れていたわけではないけど、改めて強く実感した部分もありました」
だからこそ、その感謝を形にして返したい──。
「ある意味、そこもモチベーションになる。何とか試合で投げる姿とか、活躍している姿を見せられたら、それが感謝を伝える最大の表現だと思うので、そこも再認識させられた時間でした」
担当トレーナーの三輪智輝PTは、東浜投手の登板を一塁側カメラ席から見届けました。共に歩んできたからこそ、願うような気持ちで見守っていました。
東浜投手は「担当トレーナーが根気強くやってくれた。今日も休み返上して見に来てくれました。このリハビリ期間は、そういう気付きじゃないですけど、『感謝足りなかったな、俺』って感じる3か月でした」と頭を下げました。

リハビリ期間中の”心の波”も感じながら、寄り添ってきた三輪PT。ベンチに引き揚げてくる東浜投手を見て、「良い表情だった」と笑みを浮かべました。1つ、”感謝”を伝えられた復帰戦だったのではないでしょうか。
プロで最も苦しんだリハビリ生活を経て、改めて感じたマウンドに立つ喜びと感謝。14年目のベテランが、1軍の舞台で”新たな姿”を見せてくれる日を待っています。
