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物語はまだまだこれから!川口冬弥はホークスで再び這い上がる!

上杉あずさのスコアブック
公開日:2025.11.09

再びホークスで這い上がる覚悟を決めました。川口冬弥投手は8日、育成選手として再契約する意思を球団に伝えました。9日から、筑後のリハビリ組に再合流。決意新たに、再び前を向きました。

高校では3年間ベンチ外。大学まで無名だった男が、覚悟を決めて独立リーグに挑戦し、1年勝負で掴んだプロ野球への道でした。オールドルーキーとして入団してからアピールし続けた右腕は、半年で支配下登録されました。1軍デビューも果たしましたが、その4か月後に球団から伝えられたのは来季の構想外。提示されたのは育成再契約でした。

死にものぐるいで掴んだ2桁の背番号は、こんなにも簡単に”剥奪”されてしまうのか──。川口投手が人生かけて本気で取り組む姿を見てきたからこそ、あまりにも心が苦しくなる現実でした。

「明日、球団事務所に来て下さい」と電話が掛かってきたのは川口投手26歳の誕生日でした。

その日は、納車されたばかりの車を初めて運転して博多へ。トレーニング施設へ向かう途中で鳴った電話だったといいます。

頭が真っ白になり、その日のトレーニングのことはほとんど記憶にありません。

通告を受けた3日後、筑後に取材に行くと、チームの輪の外で選手たちの練習をひっそり見つめる川口投手の姿がありました。こちらにも挨拶に来てくれたものの、やはり元気はありません。その時は、顔色も悪く、覇気もなく、抜け殻のようでとても心配になりました。

きっと、元気な身体だったら、練習に打ち込んだり、野球で気持ちを切り替えることも出来たはず。でも、シーズン終了後から腰痛でリハビリを続けてきた今の川口投手には、そうすることも出来ません。悔しさやもどかしさをぶつける場所もなく、より一層、気持ちは落ち込んでいきました。

覚悟を決めて戦った1年

25歳でプロ入りしたオールドルーキー。自身の立場を理解した上で、この1年に勝負をかけてきました。開幕から12試合連続無失点。登板数もチームトップクラスで重ねていき、球団からの期待も注目度の高さも日を追うごとに増していきました。

そして、6月20日に晴れて支配下登録されました。翌日、プロ初登板を迎えました。1軍登板5試合で無失点を記録するなど、爪跡を残しました。

ところが、この時既に川口投手の腰は悲鳴を上げていました。

5月に初めて腰に違和感を覚えたといいます。リハビリに行くべきかどうか悩んだ川口投手でしたが、開幕からアピールを続けてきて、支配下に手が届きそうなところまで来ていました。自らそのチャンスを捨てるなんてことは出来ませんでした。自らの意思で覚悟を決め、プレー続行の道を選びました。

力を振り絞り、見事に掴んだ支配下登録でした。

ただ、やはり身体の不調は球速の低下など明らかに異変として表れていました。シーズン終了まで駆け抜け、その後リハビリ組に合流。無理をしたことで、腰の状態も悪化していました。

野球エリートではなかったからこそ、身体のことも、トレーニングも、たくさん学んできた自負はあります。ケアやトレーニングを怠ってきたこともありません。日々、真摯に野球と向き合ってきました。ただ、人生でこんなに投げたシーズンも初めてです。プロの世界で未知の挑戦の連続。身体が悲鳴を上げても無理はありませんでした。

これが直接的に来季の育成契約打診に繋がったのかどうかは分かりませんが、川口投手は「あの時、リハビリに行っていたら…」と考えてしまうことも。

「支配下にもなれていなかっただろうけど、1年でクビにもなっていなかったかもしれない。こんなショックを経験せずに済んだかもしれない」──。

そんなタラレバを考えないこともありませんでしたが、自分で選んだ道、やってきたことに後悔はありません。自身の立場を理解した上で覚悟を決め、人事を尽くして天命を待った。これが川口冬弥の生き様でした。

“奇跡”を起こし続けた野球人生

振り返れば、決してスポットライトの当たる野球人生ではなかった学生時代。大学時代の母とのLINEを遡ると、100回以上「野球辞めたい」と連絡していたといいます。母に言わせれば、プロに入った今は”ボーナスステージ”。最高峰の舞台で野球を続けられていることは、”奇跡”なのです。

数々の困難を乗り越えながら”奇跡”を起こし、たどり着いた、想像さえしなかったプロ野球選手という夢。感謝の気持ちを忘れずに、一歩一歩、大切に歩みを進めてきました。そんな川口投手なら、再び立ちはだかった大きな壁も、乗り越えられるはず。

川口投手は、育成再契約し、再びホークスで這い上がる覚悟を決めました。

担当スカウトの大本将吾氏は、初めての担当選手の1年を、”親心”で見守ってきました。喜びも悔しさも共に味わった濃すぎる時間でした。そんな大本スカウトは川口投手にエールを送ります。

「一つの目標であった、支配下登録を実現してくれましたし、1年間闘志をむき出しに頑張ってくれた姿を見ると獲得できて良かったと素直に思います。年齢的な問題もあり、様々な不安の中でプレーをしていると思いますが、まだまだやれる、もっともっとできると担当スカウトは信じていますので、自信を持ってもう一度、這い上がって欲しいです。腰が痛くならないようにご飯をいっぱい食べて担当スカウトのように体を大きくしてください!」

今回の非情通告が川口投手に大きなショックを与えたことは事実ですが、担当スカウトをはじめ、多くの方に心配され、応援されていること、支えて貰っていることを身に染みて感じる出来事にもなりました。

育成入団から支配下、即戦力外、育成再契約…そこから再びホークスで支配下、更に1軍で不動の地位を築き上げるまで上り詰めた例はありません。

誰もやったことの無いことを成し遂げられるのが、川口冬弥の人間力。この人ならきっと…そう思わずにはいられません。自分にしか歩めない人生、最高じゃないか。

たくさんの方に愛される川口投手が、これから紡ぐ物語を楽しみにしています。

Writer /

上杉 あずさ『班長』

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