“プロ初登板”は、約2年7ヶ月ぶりのマウンド──。
3月7日、福岡ソフトバンクホークスの3軍は「薩摩おいどんリーグ2026」で社会人野球のトヨタ自動車と対戦しました。
「ピッチャー、津嘉山」
5回表、ホークスの2番手としてマウンドにコールされたのは津嘉山憲志郎投手でした。同期入団の石見颯真選手に声を掛けられながらマウンドへ。

2024年の育成ドラフト7位で神戸国際大付高から入団した津嘉山投手。高校1年の頃から主戦で投げ、早くから注目された”逸材”でしたが、2年の夏に右肘を痛め、秋にトミー・ジョン手術を受けました。高校最後のシーズンで登板はありませんでしたが、高いポテンシャルを評価され、プロの世界へと導かれました。
堂々たるデビュー戦も”辛口評価”
そんな津嘉山投手が、プロ野球選手になって初めて立つマウンドでした。
「ブルペンは少し緊張した」という右腕ですが、マウンドへ上がるとすぐに”勝負モード”に切り替わりました。
「まっすぐで押していこうと思っていました」と津嘉山投手。先頭打者からいきなり直球で3球三振を奪いました。
その後、安打と四球で一死1、2塁のピンチを作るも、後続を連続三振に仕留めました。結局3つのアウトを全て三振で奪った津嘉山投手。沖縄から見届けに来てくれた両親の前で、堂々たるデビュー戦でした。



さらに、初登板で自己最速となる149キロをマーク。見守った寺原隼人3軍投手コーチは「良い球投げますね。投げっぷりもコントロールも良い。これからですね」と賛辞を送りました。
堂々たるデビュー戦でした。”初登板”らしからぬ剛腕っぷりに、こちらもワクワクが止まりませんでしたが、津嘉山投手からは意外な言葉が。
「社会人の強豪相手にまっすぐのアピールが出来なかった。自分が思い描いていたまっすぐがそんなには投げられなかったですね。試合で投げていけば、もっと感覚が埋まっていくかな」と厳しめの自己評価。
三振を取ったフォークには手応えを感じていましたが、「スライダーの精度は課題ですね。試合重ねていきながら突き詰めていきたいですね」と冷静に語りました。
長い間離れていた”場所”にようやくたどり着いたのに、感慨に耽けることなく、自身の投球を振り返った津嘉山投手。
「マウンドいったらそんなこと考えないですね。抑えることしか考えてないです。それに、(感傷に)浸れるほどのボール投げてないですよ」と笑いました。
“津嘉山節”に翻弄されましたが、それでも、「楽しかったですよ」という表情には充実感が滲んでいました。
「トミー・ジョンをするっていう事実を楽しんでいました」
長いリハビリ生活の中で、苦しかったことを聞いてみました。ところが、津嘉山投手は「キツさはなかったです。トレーニングとかいろんなことが出来たので」とケロリ。「投げられないものは投げられないので」と現実を受け止め、出来ることにフォーカスしてきたといいます。
そうクールに振り返りますが、トミー・ジョン手術を受ける決断は、17歳の津嘉山投手にとって大きな覚悟だったはず。
「もう投げられないと思ったから、(手術を)やっちゃおうと。痛さもあったし、(診断)画像見ても投げられなかったので」
選択の余地はなかったといいますが、高校最後の夏を迎える前に、自ら高校野球に”終止符”を打つのがどれだけ勇気のいる決断か。
「意外とあっけなく、『ああ、終わったんだな』、『もう投げないんだな』って思いました。良い意味で言ったら、トミー・ジョンをするっていう事実を楽しんでいました。あの有名な手術を自分がするんだなと」
想像の斜め上をいく応えが返ってきました。大人びているというのか、自分の軸がしっかりしているというのか、津嘉山投手の受け止め方は独特で深みがありました。

掘り下げれば掘り下げるほど、興味が湧いてしまう津嘉山投手。これからどんなプロ生活を歩むのか、気になります。
育成2年目ですが、今季が実質1年目。
「去年投げていないので、まずは投げられるところを見せるところからですが、後半戦は2軍で。いや、後半と言わず、前半からでも2軍で投げたい」と静かに決意を込めました。
