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首脳陣が「尊敬する」と口を揃えた”奇跡”のような這い上がり物語

上杉あずさのスコアブック
公開日:2025.07.25
首脳陣が「尊敬する」と口を揃えた"奇跡"のような這い上がり物語

7月25日、育成3年目の宮﨑颯投手が支配下登録を勝ち取りました。みずほPayPayドームで記者会見が行われ、「今日から野球選手としてスタートラインに立てたと思うので、ここからもう一度上に這い上がれるように、全力で日々成長出来るように頑張っていくので、応援よろしくお願いします」と力強く宣言しました。

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首脳陣が称える劇的変化

宮﨑投手の支配下登録に至るまでの2年半は、振り返ると本当に壮絶な道のりでした。倉野信次投手コーチ兼ヘッドコーディネーターも「いやもう、去年の状態も知っているので、よくあの状態からここまで成長したなと。宮﨑自身の努力は相当なものだったと思う。変な言い方ですけど、その頑張りは尊敬に値する。それくらい劇的な変化を見せてくれた」と賛辞を惜しみませんでした。

2022年育成ドラフト8巡目指名を受け、ホークスに入団した左腕。新人合同自主トレが行われていた1月に怪我をし、トミー・ジョン手術を受けました。

“1球”も投げずしてリハビリから始まったプロ野球生活。もどかしい日々でしたが、秘めたる負けん気と野球への情熱を胸に黙々とレベルアップに努めてきました。約1年4か月のリハビリを経て、昨年3軍戦で復帰登板となる”プロ初登板”。そして、オフシーズンもウインターリーグに参戦し、自主トレでも進化を遂げてきました。

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3年目の今季は3月25日に2軍公式戦初登板。そこから結果を残し続けてきました。20試合に登板し、1勝1敗3セーブ、防御率1.11。登板を重ねるごとに信頼を積み上げ、2軍では9回を任されたり、1点も譲れないタイブレークのマウンドを託されたりと、痺れる場面でもチームの勝利に貢献しました。そして、7月24日に待ちわびた吉報が届き、本日支配下登録されました。

深刻だった”投球難”から「考えられない」ほどの進化

宮﨑投手に関わる周囲の人々が声を揃えて言うのが「去年じゃ考えられない」。というのも術後、キャッチボールで球を投げることすら危ういほど深刻な状況に陥っていました。トミー・ジョン手術後の立ち上げでは、むしろ順調に痛みもなく復帰へのステップを踏むことが出来た宮﨑投手ですが、「僕、不器用なので、投げ方が分からなくなって、半年くらい投げられなくなって」と振り返ります。広報が気を遣って、マスコミに「キャッチボールの撮影NG」をお願いしたこともありました。

最もキツかったのはプロ2年目、昨年4、5月頃のことでした。「ボール握るのが怖かったり、手が震えたり、蕁麻疹が身体中に出来たりしました」と明かすほど悩みました。それでも、「本当に野球が好きでやってきたので、野球が嫌いになりかけている自分も悔しかった」と開き直り、前を向きました。周りの方々にも優しい言葉をかけられ、背中を押され、宮﨑投手は自らを奮い立たせてきました。

首脳陣に”尊敬する”と言わしめるストイックさ

リハビリ期間から気にかけてくれていた和田毅さん(球団統括本部付アドバイザー)には「こういう経験した人にしか語れないことはある。お前はそこから這い上がってきたんだから」と鼓舞されてきました。先日、イベントでご一緒した際、和田さんは期待する若鷹として宮﨑投手の名前を挙げましたが、「コーチ陣も一時はみんなさじ投げてたくらいだったからね」と当時を思い返すと驚くほどの駆け上がりでした。「今の宮﨑なら1軍でも抑えるんじゃないかな」とも太鼓判を押しました。

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定期的に選手たちの育成状況を確認しているスカウト部の中でも「ここまでの改善は見たことない」と話題になったそうです。

川越英隆コーディネーター(投手ファーム統括)は「練習をやり込める能力はチームでトップクラス。本当に尊敬する」と語り、「支配下になったら本出せるよね」とも頷きます。それくらいのものを乗り越えてきたということを改めて痛感します。倉野コーチもそうですが、首脳陣に”尊敬する”と言わしめるストイックさは唯一無二です。

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宮﨑のストイック伝説

先述した通り、野球に真摯に向き合ってきた宮﨑投手は、夜中に1人黙々とウエートトレーニングすることもしばしば。夜中1時にベースランニング練習をするなど数々の逸話を持つ「練習の虫」仲田慶介選手(現・埼玉西武ライオンズ)がホークス時代、「宮﨑はヤバい」とその練習量の豊富さを語っていたことも。

一昨年、そんな仲田選手が「宮﨑、絶対来るんで!見といて下さい」と代弁し、売り込んできたこともありました。宮﨑投手が”兄やん”と慕う仲田選手も、自身の誕生日に届いた後輩の吉報を喜んでいました。

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並々ならぬ大きな壁を乗り越えてきた宮﨑投手。リハビリ中、何度も口にした「復帰したら捲ってやる」。「こんなやついた?」と周囲を驚かせるような”大捲り”をイメージしてやってきて、それを現実にしてみせた奇跡のような軌跡。

支配下登録という1つの大きな目標を叶えましたが、どんな時も「まだまだやるべきことはたくさんある」「圧倒できるピッチャーにならないと」と向上心の塊です。宮﨑颯という支配下の”プロ野球選手”誕生を祝うと共に、どこまで駆け上がってくれるのか、これからも楽しみに応援したいです。本当におめでとうございます!

Writer /

上杉 あずさ『班長』