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親友のバットで手応えを掴みに

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公開日:2025.07.19
親友のバットで手応えを掴みに

2軍にいる現状はもどかしいに違いありません。5年目の笹川吉康選手。前半戦の戦いを終え、2軍成績は62試合に出場し、打率.260。ウエスタン・リーグトップの36打点、同2位の6本塁打と健闘していますが、1軍で得たチャンスは14試合で35打数5安打、打率.143と当然満足いくものではありませんでした。

昨季、1軍デビューを果たすと、プロ初本塁打も放ちました。日本シリーズにもスタメン出場するなど、飛躍に繋がる1年となりました。1軍定着を目指した今季でしたが、開幕2軍。外野手に怪我人が相次ぎ、4月末に1軍昇格するも、1か月足らずの1軍生活でインパクトある結果を残すことは出来ませんでした。

「2軍で打席立ってワンランク上げてこい」
小久保裕紀監督にそう”宿題”を出され、再び2軍で汗を流す日々です。

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負けん気が強く、打てても打てなくても、試合後は黙々と打撃練習を行います。様々なドリルをやってみたり、スキルコーチや打撃コーチにも意見を求めながら、打開策を探してきました。

そして、7月13日のウエスタン・リーグ広島戦。4打数3安打2打点と勝利に貢献しました。この日まで7試合連続安打中でしたが、「内容が悪かった」と納得はしていませんでした。しかし、この日は「外野に打球も飛んでたし、見え方も良かった。何が来ても対応出来そうな感覚がありました」と試合後、明るい表情を見せました。

模索する中で笹川選手は、3月30日のウエスタン・リーグ オリックス戦で本塁打含む4安打と固め打ちをした時の映像をひたすら見直したそうです。良かった時のイメージを取り戻そうとしたことも、この結果に繋がったようです。

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そして、ニヤッと笑い、「今日はシモンのバットを使いました」ともう1つの”要因”を明かしました。12日の同戦から2軍に参加していた育成のマルコ・シモン外野手のバットを借りると、練習から良い感覚があったのだそうです。

シモン選手と笹川選手のバットではどんな違いがあるのでしょうかーー。

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笹川選手はこれまで870g〜880gのバットを使用してきましたが、最近890gのバットに変更し、重量を少し上げていました。一方で、シモン選手のはそれよりも重い915g。長さも笹川選手のより少し長いものでした。

笹川選手は「重いバットもいいなと思ってちょっとシモンに借りてみたんです。自分はいつも振りすぎちゃうので、重いバットを使ってみたらいいんじゃないかと思って。そしたら、練習で良かったんですよ。フルスイングがいい感じに抑えられてグシャンとならない感じ」と表現。

柳田悠岐選手並みのフルスイングが持ち味で、入団時から「ギータ2世」と言われる笹川選手。振れるのはいいことではあるものの、バットにボールが当たらなければ意味がありません。フルスイングとコンタクトのバランスを探っている段階でもありました。そんな時に、シモン選手のバットが良いキッカケを与えてくれたようです。

兄弟のような関係の2人

シモン選手と笹川選手は”ブラザー”。兄弟のような存在です。2022年3月、シモン選手は17歳という若さで母国のドミニカ共和国から来日。ホークスに育成選手として入団しました。

笹川選手は2020年ドラフト2巡目指名を受けて、ホークスに入団。プロ2年目の春にチームメイトとなったシモン選手とは、すぐに仲良くなりました。同じく寮生活を行う中で、「日本来てすぐの時はずっと僕かトラさん(舟越秀虎選手/現・巨人)の部屋に来てゲームしたりして遊んでいました」と笹川選手は当時を振り返ります。

昨年、笹川選手が初めて1軍に上がった時、シモン選手は心から喜んでいました。そして、「いつか1軍で一緒にやるぞ」と言葉を交わしたそうです。

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シモン選手のバットで良い手応えを感じた笹川選手ですが、「申し訳ない」と本音もこぼします。

「シモン、育成なのにバット2本くれたんで」
給与面や道具の工面など、支配下選手と育成選手とでは違いがある中、シモン選手が自身の貴重なバットを2本くれたことに感謝しました。

「代わりにサングラスをあげました」と笹川選手は自身が着用していたサングラスをシモン選手に渡すと、シモン選手は早速喜んで愛用していました。

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仲が良いだけではなく、互いをリスペクトし合える関係。いつか2人一緒に1軍の舞台へ……。思いを強くした瞬間でした。

Writer /

上杉 あずさ『班長』