若鷹の「いま」に会える場所

若鷹応援メディア Bambies

若鷹がNPB史上初の手術!インターナルブレースとは?

ちくごNews
公開日:2025.12.15

ホークスは11月7日、育成ルーキーの熊谷太雅投手が、「左肘内側側副靱帯損傷に対する修復、およびインターナルブレースによる補強術」を受けたことを発表しました。競技復帰まで8か月の見込みです。

熊谷投手は育成ドラフト12位で宮城・東陵高校から入団。185cmの長身でありながらバランスが良く、球速以上のキレを感じさせるポテンシャル高き左腕です。

しかし、怪我に泣く1年目を過ごしてきました。左肘靱帯の部分損傷で大事にリハビリ生活を送ってきました。一度は快方に向かいましたが、靭帯に緩みがあったため、再発を繰り返さないようにと手術に踏み切りました。

今回、熊谷投手が受けた「修復+インターナルブレース」という手術法は、公表例がなくNPB選手としては“史上初”でした。

すでにアメリカではメジャーリーガーが同手術を行って復帰に成功した例もありますが、日本のプロ野球界では前例がありません。

手術を担当した百武整形外科・スポーツクリニックの光井康博先生にお話を伺いました。光井先生はホークスのメディカルアドバイザーを務めており、国内でインターナルブレースを早期から導入し、多くの野球選手の治療に携わっています。

光井先生は「NPB選手で修復+インターナルブレースを行ったという話はこれまで聞いた事がなく、熊谷投手がNPBで初めてだと思います」と説明します。

トミー・ジョン手術とインターナルブレースの違い

肘の靭帯が断裂した場合、自身の腱を移植して新しい靭帯として再建するのがトミー・ジョン手術。多くの場合、手首から伸びる長掌筋腱を採取し、肘に移植します。

そして、「トミー・ジョン手術に代わる新しい選択肢」として近年注目されているのがインターナルブレースです。その名前の通り、Internal(内部の)+ Brace(支えるもの)=“体の内側に入れるサポーター”というイメージの治療方法です。

この方法では腱を移植せず、損傷した靭帯を縫い合わせて修復したうえで、その上にポリエチレン製の細い”補強テープ”を添えて支えます。

“補強テープ”は、いわば治りかけの靭帯を支えるシートベルトのような役割を果たし、動かしながら治すことを可能にします。

そのため、術後のリハビリ開始も早く、投球再開までの期間にも違いが生まれます。キャッチボール再開の目安は、トミー・ジョン手術ではおよそ4か月後なのに対し、修復+インターナルブレースでは約3か月後。

「その1か月の差は、選手にとって非常に大きい」と光井先生。1か月早く投げ始められることで、投球フォームの再獲得、投球数の増加、投球強度の引き上げなど、復帰までの工程全体を前倒しにできるのだといいます。

インターナルブレースの課題と現状

インターナルブレースが日本で導入され始めたのは、約5年前。アメリカではすでに10年ほど実績がありますが、日本のプロ野球で公表されている範囲では、今回が初めてのケースとみられており、今後の経過や長期成績が注目されています。

ただし、インターナルブレースはすべての選手に適応できる手術ではありません。損傷した靭帯が縫合し修復できる状態であることが前提で、靭帯の質が悪い場合や損傷範囲が大きい場合には、補強テープに負担が集中し、結果的にトミージョン手術を選択する必要が出てくるケースもあります。

一方、高校野球では、選択されるケースも増えています。例えば、2年生で怪我をした球児が、最後の夏に間に合わせるために、インターナルブレースを選択するケース。トミー・ジョン手術からの復帰プログラムをじっくり行うとなると、高校野球はあっという間に終わってしまいます。トミー・ジョン手術の半分ほどの期間で復帰出来るインターナルブレースは、そういった選手にとっては画期的な方法です。

光井先生は「今後、トミージョン一辺倒だった内側側副靭帯損傷治療の新たな選択肢となると思います」と語ります。今回、熊谷投手がインターナルブレースの手術を受けたことは、プロ野球界としても大きな一歩となりました。

「NPB初なんてカッコイイ」熊谷の現状と心境

トミー・ジョン手術であれば、復帰まで1年半以上かかる中、熊谷投手の競技復帰の目処は8か月とされています。

術後すぐは「痛くてしんどかった」と熊谷投手。約1か月が経った今、ギプスは外れ、「だいぶ良くなってきています。可動域も出てきたし、痛みはほとんどないです」と経過は良好のようです。

春季キャンプ中にボールを投げられるようにすることを目標に、現在はウォーキングや下半身ウエートなどで身体を動かしています。

将来性豊かな左腕のプロ野球生活は、怪我続きで苦しい船出ですが、熊谷投手は「(NPB)初なんてカッコイイなと思って!」と笑みを浮かべました。

「これから主流になりそうですよね。靭帯がだるんだるんだったらトミー・ジョンだったので、ある意味よかったのかな」と前向きに受け止めました。さらに、「競技復帰8か月と言われているけど、早まることもあるそうなので、それを目指して頑張ります」と強い気持ちでリハビリに励みます。

肘も心もスッキリして、来季の実戦デビューを目指して欲しいです。

▼関連動画▼


Writer /

上杉 あずさ『班長』

Pickup /

ピックアップ記事

Sponsor/

スポンサー

View More