たくさんのファンに見守られる中、正木智也選手が大きな歩を進めました。
4月30日に左肩関節亜脱臼に伴う左肩関節バンカート修復術を受けた正木選手。当初は競技復帰まで5~6か月かかる見込みとされ、レギュラーシーズン中の復帰は絶望的でした。
しかし、そこから驚異的な回復を見せ、先月20日から屋外フリー打撃を再開。シーズン中の復帰を視野に入れ、リハビリを進めてきました。

実戦復帰し、2試合連続長打
9月9日、九州アジアリーグ・宮崎サンシャインズとの4軍戦で実戦復帰しました。「1番・左翼」でスタメン出場すると、第1打席に先頭打者本塁打。3打席に立ち、2打数1安打(1本塁打)と華々しい復帰戦になりました。
そこから中3日の13日、北九州下関フェニックスとの4軍戦に「3番・左翼」でスタメン出場。4打席立って、3打数1安打。第1打席に左翼への二塁打を放ちました。「今日は練習であまり良くなかったけど、1打席目にヒットが出たので状態は悪くない。むしろ良い方だと思いますし、いい形で打てているかなと思います」と振り返りました。7回まで守備につき、8回に代打を送られて交代しました。

復帰初戦で3打席、2戦目で4打席というのはリハビリのプラン通りとのこと。ここまでは身体の状態的にも問題ないようです。
2試合を終え、正木選手は「ボールの見え方的にもストライク、ボール見れていますし、甘い球を打ちにいけている。そこの確実性を上げていけたらなと思います」と手応えを感じていました。
コーチが感じた正木の隙のなさ
この日、4軍戦ながらチームに帯同していた清水将海3軍バッテリーコーチが試合中、ベンチからではなく、スタンドやカメラ席から試合を見守っていました。いつもと違う景色からグラウンドを見つめることで、様々な発見があったそうですが、その中で改めて感じたのが正木選手の”凡事徹底”。
「見ていると抜かりないですね。凡退してもしっかり走るし、上から(俯瞰で)見て、改めて1軍の選手だと思った。正木は隙を見せたらダメだと分かっている。最後の最後はそういうところが出る世界だからね」と目を細めました。

試合後、正木選手に「徹底していること」を尋ねてみました。すると、「普通に1軍でやっていることを4軍でやらないのは違うと思うので、フライが上がったら全力で野手が捕球するまで走るとか、そういうことは絶対。4軍の選手も見ているし、絶対手を抜かないように、1軍の試合に出ているのと同じようにやっています」と頷きました。まさに、清水バッテリーコーチが感じた通りのことを”徹底”していました。
全てを自身の肥やしに…止まらぬ探究心と進化
出場した2試合は共に点差が開き、集中力が切れてもおかしくない展開でしたが、正木選手は「リハビリ明けたばかりなので、次はスライダー打ちたいなとか、低めを見逃せるように待ってみようとか、そういうの考えながらやっていたので、全打席、結構集中していました」と振り返ります。
どこの軍にいるかなんて、関係ないのです。むしろ、正木選手は4軍で共にプレーする育成選手たちを見て、「ガムシャラにやっていますし、変な気負いとかなく純粋に野球を楽しんで、純粋に相手ピッチャーと対戦している。僕はいろいろ考えちゃうタイプなので、そこは対ピッチャーとか純粋に野球を楽しむとか、参考になりました」と全てを自身の肥やしにしていました。
1軍では様々なプレッシャーや背負うものも多く、”楽しむ”というメンタルで野球をするのは簡単なことではありません。4軍で復帰したことで、初心を思い出せるような貴重な時間になっているのかもしれません。

また、リハビリ期間もずっと打撃のことを考え、追究してきた正木選手。「どうやったらよくなるかとか、どうやったら飛距離が伸びるか、打球速度が上がるかとか考えてやっていました。考える時間が多かった分、これからもっといい方向にいけたらなと思います」と悔しいはずの時間も全てプラスに変えて、パワーアップしてきました。
受け止めたファンの声援
この日、北九州市民球場には正木選手のタオルを持ったファン、ユニフォームを着たファンが多数駆け付けていました。そのことについて問いかけると、正木選手は「ふふふ、たくさんいましたね。感じました、感じました」と笑みを浮かべました。
「すごく声も掛けてもらったし、嬉しかったです。なかなかこんなに来て貰えることもないと思いますし、感謝したいですし、そういう人たちの前でヒット1本打てたので嬉しかったです。残りシーズンは少ないですけど、ここから上に上がっていけたらなと思います」と正木選手はニコッと笑いました。

ただ、笑顔の中には強い決意も滲みます。問題なければ、15日から2軍に合流する予定とのこと。正木選手の復帰を待ち望む多くのファンの声援も力に変えて、シーズン終盤、ポストシーズンでの1軍復帰を見据え、着実に歩みを進めています。