前田悠伍投手が、念願の今季初勝利を飾りました。
5月10日、本拠地での千葉ロッテマリーンズ戦。今季2度目の1軍先発機会でした。2回に先制2ランを許すも、粘り強く5回を投げ抜き、2失点。打線の援護にも恵まれて、今季初勝利を挙げました。
「素直に嬉しいです。でも、序盤に球数かかっちゃったりとか、2回は井上(広大)さんの入りが浮いてしまったので、反省点もたくさんある。結果としては嬉しいですけど、内容見たらまだまだ反省というか、直せるところはあるなって感じです」と手放しには喜びません。
最大のピンチだった5回二死1、3塁の場面は、見事三振で切り抜け、雄叫びをあげました。「ああいうところで抑えないと1軍の選手じゃないと思いますし、あれで1軍か2軍かっていうのが決まるかなと思ったんで、絶対抑えたろっていう気持ちでした。気合いは1番入っていましたね」と充実感たっぷりに振り返りました。
今季”初先発”となった4月26日のマリーンズ戦(鹿児島)は、無念の降雨ノーゲーム。そして、5月3日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦(みずほPayPayドーム福岡)で、正真正銘の今季初先発。5回4安打無失点の好投でしたが、チームは敗戦。
ようやく辿り着いた今季1勝目は、本拠地初勝利でもありました。それでも、前田悠投手は「本拠地で勝てたのはとりあえず良かったと思いますけど、次があるので。そこに向けて、練習は怠らないようにというか、よりレベルアップするためにやっていけたらいいかなと思います」と既に次を見据えました。
耳を疑った「スタバ行きたい」発言の真相
今季初勝利をクールに振り返る前田悠投手ですが、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。
春季キャンプから悩める時間は続きました。2月の侍ジャパンとの壮行試合では屈辱の2回途中7安打6失点。その後、先発予定だった3月3日の本拠地でのオープン戦初戦を前に、体調不良で登板回避。そのまま開幕ローテ争いから脱落しました。プロ3年目は厳しい幕開けでした。
そんな時、前田悠投手に”とある変化”が見られました。
周囲が耳を疑った「スタバ行きたい」発言──。
前田悠投手といえば、外食はほとんどしない、先輩からの誘いも断る、趣味は野球……入団からプライベートの様子がなかなか浮かばないことでもお馴染みになりましたが、そんな左腕から出た”ビックリ発言”。
証言するのは宇野真仁朗選手です。
「一緒に寮でご飯を食べていたら、悠伍さんが急に『スタバ行きたい』って言い出して」
突然の「スタバ行きたい」発言に驚きつつも、「じゃあ、乗せていってくださいよ」とお願いした宇野選手。

その時のことを前田悠投手に聞いてみると、「『スタバ行きたい』ってのはチョケで言ったんですけど、宇野が『行きたいっすね』って言うから。『行かんよ!』って流したんですよ」とニヤリ。
誘われたのに、何故か突き放された宇野選手。「おかしくないですか?コミュニケーションになってないですよね」とすかさずツッコミ。

冗談か本気か、「スタバ行きたい」と口にした前田悠投手。その真意とは──。
「川口(冬弥)さんが気分転換は大事だって言ってたし、ドライブがてらスタバ行ってみようかなと思って」と明かします。
“チョケ”と言いつつ、宇野選手の部屋の前に立ち、「行くぞ」と後輩を連れ出しました。
実は体調不良明け、川口投手とオフの過ごし方について語ったことがありました。
「体調不良明けの時、練習終わったらずっと寝てたんですけど、川口さんに『ドライブとか買い物とかした方が、リフレッシュなるで』って言われて。1回行ってみようと思ったんです」
川口投手とは前田悠投手の運転で初めてのモスバーガーへ。そして、宇野選手を誘ってのスタバ。「別にスタバが飲みたかったわけではなく、ドライブですね!」と覚えたてのリフレッシュ法で気分転換。
気分転換に外出を考えたのも、大きな変化。「相当いろいろあったし、1回そういうリフレッシュもいいかなと思って」と新たな経験を求めました。心身ともに様々なものを抱え込んできた前田悠投手にとって、現状打破に繋がる良いリフレッシュになったようです。
こうして、「スタバ行きたい」発言の経緯を説明してくれたのですが、横で聞いていた宇野選手は「スタバに行くことがそんなに迷うことなんですか?」と首を傾げました(笑)
ちなみに、前田悠投手がスタバに行ったことを聞きつけた周囲は、驚きの表情を見せました。同学年の藤原大翔投手が「寮から出るとこ見たことないです」と言えば、長水啓眞投手は「宇野!悠伍を社交的にしてくれてありがとう」と笑います。
さらに、後輩を誘って外出するとなると、なかなかないこと。「宇野ってちょうどいいんです。しっかりはしているじゃないですか。でも、うるさくはないし。そういう面では話していて、トーンが合う」と前田悠投手にとって、居心地の良い存在のようです。
投手と野手、2軍とリハビリ組で、同じ時間帯で動くことは少なかったですが、見かける度に後輩に”ちょっかい”を出す姿には思わずホッコリ。可愛い後輩とのやり取りも、新たに覚えたリフレッシュ法も、今季初勝利に繋がる貴重な時間だったのかもしれません。

今季初勝利も「浸り終わった」…リフレッシュ不要な日々へ
しかし、前田悠投手は「もうめんどくさいんで、行かないです!スタバも地味に遠いんですよ、寮から10分〜15分かかるので」と笑います。
「あの時は、野球が上手くいってなかったし、それで疲れていたんですけど、今は上手くいっている。充実しているので、そんな疲れも溜まっていない。あの時は、ホンマに何かやらないと、ずっと部屋いて余計なこと考えちゃってたんですよね」
「ドライブするのもめんどくさかった」という左腕が、「そうでもしないと気が紛れなかった。今までそんなことなかったですよ」と明かすほど、あの頃は苦しんでいたのです。
そんな時間を乗り越え、「今はいい方向にいってます。状態的にもいいですし、自分でやるべきことが明確になっています」と目を輝かせています。
全体練習後、試合後、そしてオフの日も1人黙々と繰り返した自主練習。”産みの苦しみ”を味わって掴んだ今季初勝利は、きっと格別なはずですが、「もうヒーローインタビューぐらいで浸り終わったんで、あとは、帰ってからいろいろ映像見て、良かった点や悪かった点(を確認して)、しっかり明日以降に繋げていければいいかなと思います」と語る──。これが、前田悠伍なのでしょう。
これからは、”リフレッシュドライブ”も不要な日々を過ごし、勝利を積み重ねて欲しいです。前田悠投手の巻き返しに期待しています。

