「やれることは全部やった。後悔はないです」
全てを出し切って迎えた4回目の支配下登録期限も、”吉報”は届きませんでした。
育成4年目の西尾歩真選手。3年連続、2軍で3割を超える打率をマークし、安定感ある守備でもチームに貢献してきました。今季もここまで2軍戦40試合に出場し、3割5分、6盗塁。3試合に1回程度のスタメン機会で結果を出すのは簡単ではありませんが、起用されたら必ずといっていいほど”仕事”をしてくれる貴重な存在です。
今年も期限ギリギリまでアピールし続けました。しかし、支配下には届きませんでした。


2022年育成ドラフト13位指名を受け、中京学院大学から福岡ソフトバンクホークスに入団。抜群のミートセンスや堅実な守備走塁が魅力の実戦力高い内野手です。さらに、どんな時も元気に声を出して全力プレーする西尾選手。ハツラツとした姿に惹き込まれるファンも多くいます。
しかし、姿こそ変わりませんが、期限を過ぎると、そんな西尾選手にも複雑な感情が渦巻いていました。
「難しいですね。(期限)前みたいにやれって言われても難しいですけど。ちょっと気持ちをシフトチェンジしながら…。いつまで野球やれるか分からないので、今を楽しんでやろうかなと」
7月27日の朝、3選手の支配下登録をニュースで知り、「もうないんだ」と悟りました。その日は午前10時から練習でした。当然、モチベーションを保つのは簡単ではありませんでしたが、同じく支配下が叶わなかった大泉周也選手と「お疲れ」と労いあったといいます。
限られたチャンスで結果を残し続けるというのは、育成選手の使命ではあるものの、心技体全てにおいて容易ではありません。
それでも、西尾選手は「他の育成野手もいる中で、僕はチャンスを貰ってきたので、本当に感謝しかないです。7月末まで2軍にいないと、(支配下争いの)土俵にも立てないというか。去年も今年も(期限まで)比較的2軍にいさせてもらった。育成3年で終わるのかなとも思っていたので、4年目もあって、7月末までいっぱいいっぱいやらせてもらったので、悔いはないし、ありがたい」と感謝の言葉を述べました。

「めちゃめちゃ悔しかった」…それでも貫くポリシー
8月からも変わらぬ姿でプレーしていますが、それは西尾選手のポリシーでもあります。「落ち込むこともあるけど、浮き沈みは見せないように。誰にでもあると思うんですけど、それを見せるのはカッコ悪いじゃないですか」と以前から語っていました。
だからこそ、「はたから見たら、『あいつ悔しそうじゃないな』とか思われるかもしれないですけど……めちゃめちゃ悔しかったんで…」。そう力を込めました。
投手が不足しているチーム事情もあり、なかなか野手にはチャンスがありませんでした。西尾選手は「やっぱみんな『仕方ない』って言いますけど、もし支配下に上がれていたとしても、今の1軍に入っていけるかって言われたら、まだまだですし。『仕方ない』だけじゃ済ませられない。レベルアップするしかないです」と冷静に見つめました。
「慰めで 『他の球団が見てるから』って結構いろんな人にも言われましたけど、僕はそうじゃなくて…」とホークスへの思いも明かしました。

新たな気持ちでも「諦めずに」挑む日々
期限を迎えて、モチベーションは難しいにもかかわらず、西尾選手は8月1日、2日と躍動しました。
後半戦最初のカードとなった7月31日からのファーム・リーグのオリックス戦(タマスタ筑後)。2、3戦目にスタメン出場すると、素晴らしい活躍を見せました。
1日は3打数1安打1打点。好左腕の曽谷龍平投手から3回に中前打を放ちました。「自分の思っていた軌道にきた球に、思っていたバットの軌道が出て、思い通りの打球が飛んだ」と納得の一打でした。
タイミングを取るのが遅いと感じていたため、「だいぶ早めに取るようにしたら、力の伝わり方が良かったんですよ」と手応えを口にしました。
その好感触を翌2日もしっかり試合で発揮!第1打席に三塁打、第3打席、第4打席に二塁打を放つ活躍。インパクト十分のプロ初の”3長打”でした。
「期限も終わったんで、ちょっと強く振ってみようかなと思って」と西尾選手。これまでは打率と出塁率を意識し、結果重視の打撃スタイルでした。しかし、7月31日を過ぎ、少し気持ちをリセットするかのように、思いっきり振ってみると、3本も長打が出ました。

西尾選手からしたら、”自分のスタイル”ではないといいますが、心機一転で新たな姿を見せてくれたのです。
4年目の夏も、悔しくてたまらない現実が待っていました。期限を迎えて、1つの大きな目標を失った今も、西尾選手は「諦めずにやります」と前を向きます。
「いつまで野球やれるか分からないので」──。
1日1日を大切に、感謝を込めて、真っ直ぐに野球と向き合い続けます。
