「その不思議な感じをみんなにも味わって欲しい」
斉藤和巳2軍監督がそう語るのは、彗星の如く現れた育成の”新星”、北斗(大山北斗)投手。
2025年育成ドラフト8巡目。昨秋のドラフト会議で全体の116番目、”最下位指名”を受けて福岡ソフトバンクホークスに入団しました。
中央大学準硬式野球部からプロの世界へと飛び込んだ北斗投手。春季キャンプは筑後のC組で、まず硬式球に慣れることや、身体づくりからスタートしました。3月に3軍で実戦デビューすると、7試合に登板。しっかり結果を残すと、2軍でもすぐに頭角を現しました。2軍公式戦7試合で2勝0敗、防御率1.37とアピールを続けると、7月1日、晴れて支配下登録を勝ち取りました。


「我々の頭の中の北斗は、もう次の段階に」
北斗投手は3軍で結果を残し、5月4日のオリックス戦で2軍戦初登板。1回無安打無失点と上々のデビューを果たすと、怪我人が相次いだチーム事情もあり、8日の阪神戦に中3日で初先発を託されました。勝ち負けつかずも、5回1失点と好投すると、そこから気が付けば2軍の先発ローテの柱になっていました。
背番号「164」の育成選手として最後のマウンドとなったのが、6月23日のファーム・リーグ巨人戦でした。先発した北斗投手は9回1失点で、プロ初完投勝利を挙げました。
プロ入り後の最長イニング、最多116球という球数で、”志願”の9回を力いっぱい投げ切ってみせました。
しかし、試合後の北斗投手は、「最後、リチャードさんにエグい球打たれちゃったんで。パッとしない終わり方だった」と反省。
2-1とリードはわずかに1点だった9回、一死1塁でリチャード選手への初球のチェンジアップが甘く入りました。結果的には左飛に打ち取りましたが、あわや本塁打というヒヤリとする場面でした。
「小笠原(2軍投手)コーチにも、結構厳しめなことを言われました。『(みずほ)PayPayドームだったら入っていた』と。最後の球を、ちゃんともうちょっと練習しようと思います」
斉藤2軍監督も「もっと上を目指すには『ここ』という時のボールをどう投げるか。細かいところが絶対大事になってくる」と指摘しました。
プロ初完投でも”苦言を呈される”ルーキー。「『よくやった』とかは(誰からも)なかったです」といたずらに笑った北斗投手でしたが、準硬式出身の育成新人がそう思われるのも、期待の高さゆえ。


斉藤2軍監督は、この時のことを改めて振り返ってくれました。
「これまで彼のピッチングを見てきて、ある程度、完投するイメージは湧いていたから。そこはいけるやろうなっていう。最後まで投げ切ったことは素晴らしかったけど、上のレベルを考えると、内容を詰めていかないといけない立場。自然と我々の頭の中の北斗は、もう次の段階に入っていっていたんだと思う」
「まず硬式に慣れるところから」と始まったプロ生活でしたが、登板を重ねるごとに周囲の評価も、首脳陣が求めるレベルも上がっていったのです。2軍で”完投しても褒められない”ことこそが、北斗投手の駆け上がってきた現在地を表していました。

キラリと光る北斗の”不思議な魅力”
斉藤2軍監督は「怪我人が多いのもあったけど、いろんなタイミングが重なって、この日まで来たなって。他の支配下の先発投手がいないわけではない中で、チャンスが回ってきた。結局は、北斗がそういうピッチングを2軍で続けてくれたから。彼が日頃からしっかり野球に向き合えていたりとか、目の前の事を一生懸命やるとか、ベストを尽くすとか。そういったことから流れが来たのかな。いろんな力を味方に付けた、引き寄せたよね」と思い返します。

もちろん、これまでに苦しんだ登板もありました。それでも、北斗投手の個性はどんな時もキラリと光っていました。
「粘り強さはめちゃめちゃ感じるし、何と言っても、誰が見ても、彼の1番の持ち味はあのテンポの良さ。どんな不利な状況になっても、彼の独特な投球スタイルは変わらない。ピンチになったりボールが続くと、投手はテンポが悪くなるもの。北斗もそういう登板は全然あるのに、なぜかテンポの悪さを感じさせない」と斉藤2軍監督は北斗投手の”不思議な魅力”を語ります。
「不思議な投手。その不思議な感じを、1軍でも出して欲しいし、みんなにも味わって欲しい。あのテンポの良さが1軍でどんな感じになるんやろうね。まだ想像ができないし、楽しみすぎる」と来る北斗投手のプロ初登板にも期待を込めました。
北斗投手が投げる時、打線が援護してくれたり、黒星がつかない(公式戦無敗)のも、持ち味の投球スタイルや彼の実直さが引き寄せる”不思議な魅力”なのかもしれません。
これからベールを脱ぐ”新星”がどんな姿を見せてくれるのか、注目です。真っ直ぐに野球と向き合ってきて掴んだ「43」の新たな背番号で、球界の”北斗七星”は輝きを放ってくれるはずです。
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