とにかく寂しい。厳しい世界だから、仕方ないことだと受け入れるしかないけれど、冷たくなった秋の風がより一層せつない気持ちにさせる。
ホークスは27日、新たに8選手に来季契約を結ばない旨を通達しました。
育成のマルコ・シモン選手も非情通告を受けました。2022年1月に来日し、4年目のシーズンを終えたところでした。
母国のドミニカ共和国からホークス入りを決意したのは17歳の時。異国の地での挑戦も、元気いっぱい楽しそうに日々プレーし、チームメイトたちと打ち解けるのも早かったシモン選手。この4年で、日本語もたくさん話せるようになりました。
シモン選手と話をする機会は多くありました。来日当初、私が野球をしていることを知ると、ドミニカには女子野球がなくて興味深かったようで、よく”逆取材”されました。

慣れてくると、ちょっかいを出してきたり、日本語で冗談を言ってきたりと無邪気に接してくれたシモン選手。
今季はほぼ通訳さんを介さずに、ある程度の日本語で取材も出来るようになっていました。シモン選手のコミュニケーション能力には驚くばかりでした。
彼のキャラクター、人柄に惹き込まれたファンの方も多いのではないでしょうか。



もちろん、選手としても非凡な能力の持ち主です。周東佑京選手も認めた俊足に、豪快なフルスイング。守備力も年々向上しました。走攻守全てでアグレッシブなプレースタイル。
シモン選手自身も1番の思い出と振り返る、みずほPayPayドームでの本塁打は圧巻でした。10月11日の3軍練習試合。1軍本拠地で開催された一戦で、3ラン本塁打を放ったシモン選手。ダイヤモンドを1周すると、尊敬するアルフレド・デスパイネ選手でお馴染みの本塁打パフォーマンスを披露しました。


この試合では、未遂に終わるもホームスチールを敢行するなど、いつも”攻めの走塁”で本当にワクワクさせてくれました。
ちょうど4年前、シモン選手のホークス入団が決まった時のコメントが忘れられません。
「ソフトバンクホークスから話をもらった時は嬉しくて涙が出ました。家族もすごく喜んでくれましたし、これから家族を支えていけるよう、日本で大活躍したいです」
世界中にたくさんのプロチームがある中で、日本のホークスでプレーすることを泣いて喜んでくれたことを知り、応援しないわけがありません。
最近では、お調子者すぎて「初心を思い出してくれー」と思うこともありましたが(笑)ホークスで笑顔で全力プレーする姿を見る度に、こちらも思わず笑顔になってしまう。見ていて楽しい選手でした。
シモン選手自身、ホークスを愛していたからこそ、今回の”通告”を受けてひどく落ち込んでいるのではないかと心配しました。国際部スタッフによると、「泣くんじゃないかと思ってたけど、意外とスッキリした様子だったよ」と冷静だったことを教えてくれました。
1週間前、練習取材に行った時、まもなく帰国することを聞きました。
「また来年ね!来年は1軍!」
そう日本語で語ってくれていたのが最後の会話になってしまいました。
シモン選手は当初の予定通り、”通告”翌日の28日早朝に福岡空港を発ちました。最後にお礼とエールを届けたくて、お見送りに駆けつけたのですが、いろいろと手違いがあって、会えぬままとなってしまいました。せつなくて思わず涙がこぼれました。
正直なところ、昨年のマイロン・フェリックス投手の件があったので、「今年が本当に勝負」であることは感じていました。だからこそ、2軍公式戦初出場&初安打の時は、心の底から嬉しかった。
悠長なことを言っていられる世界ではないけれど、ドミニカから17歳で来日して、やっと21歳になったばかり。怪我も多かったため、なかなかチャンスをものに出来なかった面もありましたが、もう少し、ホークスでのこの先を見たかった。

過去の写真を探していると、顔つきも身体付きもたくましくなったなぁと感慨にふけってしまいます。


日本人選手であれば、野球を続けている限り、またどこかで会えるだろうと思うけれど、シモン選手の場合は分かりません。ドミニカなのか、別の国なのか、日本の他球団なのか…。
また会えたら嬉しいけど、羽ばたくのならば憧れのアメリカでチャンスを掴んで欲しいなと思います。
いろんなことを考えますが、4年のホークス暮らしの中で、環境に慣れすぎて、少しマンネリ化していたようにも感じます。私見で申し訳ないですが、あのポテンシャルを開花させるには、もっとハングリーになって崖っぷちの環境の中で戦う方がいいのではないか。正直、そんな思いも抱いていました。
寂しい気持ちには変わりないのですが、ホークスで学んだたくさんのことを、次のステージで生かして欲しいです。
夢はでっかくーー。
世界で活躍できるポテンシャルを秘めていると信じています。
ありがとう、シモン。パワフルなプレーでたくさん楽しませてくれたあなたは、エンターテイナーでした。「シモンは昔、ホークスにいたんだよ!たくさん取材してたんだよ!」といつか自慢したくなるようなビッグな選手になってください。
元気でね。もう怪我しないようにね。
またいつか、会えますように。

