大事な一歩を踏み出したマウンドでした。試行錯誤を重ねて、ようやく掴んだ1つの光──。
昨年から「今年結果出さなかったらクビ」と腹を括って背水の思いで腕を振ってきた山崎琢磨投手。
2021年育成ドラフト7位で石見智翠館高校から福岡ソフトバンクホークスに入団。高校3年の夏は島根県大会決勝でノーヒットノーランを達成し、同校を甲子園ベスト8に導くなどエースとして輝きを放ちました。
そんな山崎投手も高卒5年目。大卒ルーキーと同学年になる右腕にとって、今年こそ”勝負の年”なのです。
それでも、開幕から思うような結果が残せていませんでした。なかなかストライクが入らず苦しんだり、痛打されたりといった登板を経ながらも、試行錯誤してきた山崎投手。
そんな中、4月14日の四国IL・高知ファイティングドッグスとの練習試合に先発し、7回途中3失点(自責2)と好投しました。7回に突入したのもプロ入り後、初めてでした。
5回には、味方失策と連打で無死満塁のピンチを迎えるも、遊飛と三振で二死までこぎつけました。しかし、続く打者をフルカウトまで持ち込むも押し出し四球。
「あれは悔しかった。負けたくなかった。最後、フォークを見切られたけど、僕の真っ直ぐの球威がもっとあれば」と唇を噛みましたが、充実感のにじむ”勝負”が出来たのも、手応えのある投球だったからこそでしょう。
7回は、球数が100球に到達したところで交代を告げられました。「投げきりたかった」と悔しがりましたが、1つ壁を乗り越えた登板となりました。

現状打破へ求めた”変化”
この日は、投球フォームの”意識”を変えて挑んだ山崎投手。
指先までしっかりと力を伝えるため、そのスタートとなる”立ち方”を見直しました。「前までは(軸足に力を)溜めたい溜めたいと思って前傾したりしていたけど、立った時にかかと重心にして、足上げてそのままの勢いでいく、みたいな。反ってもいい、お腹を出すくらいの方が自分には合っていると練習していて感じたので」とこれまでとは”真逆”の意識でトライ。
寺原隼人3軍投手コーチも「身体の使い方を変えて挑んだ試合だったけど、いつもよりしっくり来ているように見えたし、本人も感覚的に悪くなさそうだった。この悪天候の中で、よく投げましたね」と頷きました。
様々な人に助言を求めたり、練習の中で試行錯誤しながら、思い切って自ら変化を求めました。「自分で気付いて工夫しているのは良いことだし、それが結果として表れたのも良い傾向。次にも期待できる」と寺原投手コーチも成長を認めました。
そして、ずっと課題としてきたことがクリア出来た登板でもありました。これまではイニングを重ねるごとに球速が落ちていた山崎投手。「プロに入ってずっと言われ続けていたこと」と自覚しながらも、様々なドリルで練習を重ねてもなかなか改善できませんでした。
しかし、この日はイニング間のベンチ前キャッチボールでも、バランスや立ち方を確認しながら挑みました。すると、自己最長イニングになっても、大きく球速を落とさずに最後まで投げることが出来たのです。
「今年結果出さなかったらクビ。去年もそうでしたけど。でも、それに怯えてやるんじゃなくて、自分がこれって決めたことをやり続けて、結果出せば呼んでもらえると思う。思いっきりやるだけです」と力強く語りました。

フェリペ ナテル3軍投手チーフコーチからは「エンジョイベースボール」と常々声を掛けられていたといいます。
試合後、「打者との勝負を楽しめたかな」と微笑んだ山崎投手。マウンド上での姿も堂々としていました。フェリペ投手コーチも「楽しそうでしたね。まずはそこからです」と頷きました。
山崎投手は「これを続けないと」と安堵することはありませんが、右腕にとって、大きな一歩を踏み出せた一戦になったはず。
勝負のシーズン、ここから這い上がる姿を楽しみにしています。
