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乗り越えるべき”試練”…木下勇人の特別な復帰戦

上杉あずさのスコアブック
公開日:2026.03.11

10ヶ月を超えるリハビリを乗り越えて、ようやくたどり着いた実戦復帰。

育成2年目の木下勇人選手は様々な思いを胸にグラウンドに立ちました。

鹿児島県内で開催されていた「薩摩おいどんリーグ2026」。福岡ソフトバンクホークスの3軍は、今年も同リーグに参戦し、2試合を戦いました。

3月7日、大越基3軍監督体制となって最初の実戦機会を迎えました。薩摩川内市総合運動公園野球場で、社会人野球の強豪・トヨタ自動車と対戦しました。

プロ初登板や初出場の選手、実戦復帰の選手が多数いたこの日の試合。木下選手にとっても特別な一戦となりました。

ルーキーイヤーの絶望

2024年育成ドラフト11位で千葉経大付高からホークスに入団した木下選手。走攻守揃った好素材で、中でも俊足が持ち味の外野手です。

ルーキーイヤーの昨季、希望に満ちてスタートしたはずのプロ生活。しかし、待っていたのは”絶望”でした。

4月24日、高卒新人ながら2軍に参加した木下選手。公式戦の合間に組まれた社会人チームとの練習試合で、初めての2軍戦出場機会を得ました。

もちろん、意気込んだ”デビュー戦”。途中出場で右翼の守備に就きました。ところが、ファウルゾーンに飛んだ打球をスライディングキャッチしようと夢中になって走った、その時──。

木下選手は膝が曲がった状態でそのままフェンスに激突し、左膝の大怪我を負ったのです。

試合中に救急車で運ばれ、即手術。5日間ほどは寝たきりで、3週間の入院生活を送りました。

「あれでも不幸中の幸いだと思う」と中谷将大リハビリ担当コーチ(当時)も語っていましたが、あまりにも痛ましい怪我でした。

「NPBトップクラス」と評される俊足が持ち味の木下選手にとって、膝の怪我は致命的でした。

「毎日、大丈夫かなって思っていました。また走れるようになるのかなとか、スライディングしても痛くないのかなとか」と不安な気持ちも簡単には拭えません。

同時に左指も負傷していたり、リハビリ途中で左太ももの肉離れを起こしたり、なかなか思うようにはいきませんでした。一進一退を繰り返す、そんなプロ1年目を過ごしました。

復帰戦の対戦相手は”宿命”なのか

そして、約10ヶ月の苦しいリハビリを乗り越えて迎えた7日の復帰戦。

様々な思いを抱きながら、ようやくたどり着いた一戦の対戦相手は、巡り合わせなのか、宿命なのか。あの時と同じでした──。

昨年、木下選手が怪我をした練習試合と同じく、トヨタ自動車戦。

“トラウマ”や”恐怖心”が完全にないとは言えませんでした。

「最悪だ、と思いました。あのユニフォームを見たくなかった…」

対戦相手を知らされた時は正直、そう思ったという木下選手。どうしても”あの時”を思い出してしまいます。

それでも、「試練なのかな」と受け止めて挑みました。

試合前には、トヨタ自動車の監督やトレーナーさんのもとへ挨拶に行った木下選手。「”あの時”お世話になりましたし、入院中もお見舞いに来て頂きました」と感謝する方々にも直接復帰を報告出来ました。「今日は元気なプレーを見せてくれよ」と激励されたといいます。

「楽しかった」復帰戦

「久しぶりの試合は雰囲気含めて、楽しかったです」と充実感たっぷりに振り返った木下選手。

試合前には、円陣で声出しを任されました。「来るかなと、若干準備していました」と自ら考えたリズミカルな演出で士気を高めました。

2打数無安打でしたが、1つ四球を選んで出塁しました。5回まで守備に就き、「まずは怪我しなかったので、それが良かったです」と安堵しました。

今となって振り返れば、「トヨタ戦で良かった」と頷きます。”試練”を乗り越え、大きな一歩となる復帰戦になりました。

胸に秘める熱い気持ち

リハビリ当時から木下選手の復帰をサポートしてきた中谷4軍打撃コーチ(当時リハビリ担当)は「また野球が出来ていること自体、すごいこと。本当に良かった。僕も嬉しい」と目尻を下げました。

木下選手は、「中谷コーチがいつも良い言葉をかけてくれていました」と辛いリハビリ期間を支えてくれた”恩人”に感謝します。

「今は焦るな」、「上で活躍しよう」と常にポジティブな言葉で背中を押してくれた中谷コーチ。

「木下は『もっとやりたい』、『早く取り返したい』と思う子。ハートも強いし、良いメンタルしてますよ」と中谷コーチは木下選手の内に秘めたる熱い思いを感じてきました。

気持ちの熱さといえば──。
怪我をした当初、木下選手はこんなことを語っていました。

「育成なので焦っています。背番号3桁は恥ずかしい。早く抜け出します」

プレー出来ないもどかしさ、悔しさを胸に抱えながらも、虎視眈々と上を目指してリハビリや練習に励んできたのです。

苦しいことの方が多いリハビリ生活でしたが、良い経験もありました。昨年は柳田悠岐選手や今宮健太選手、栗原陵矢選手など多くの主力選手が怪我でリハビリ組にいる時間が長かったため、一緒に練習する貴重な機会を得ました。

「いろんな主力選手を近くで見ることが出来たし、そういう点では、リハビリにいたのが去年で良かったのかな」と成長するための時間だったと捉えました。支配下への思いを強くした時間でもありました。

プロ1年目に与えられた大きな試練を乗り越えた木下選手。これから羽ばたくべく、熱いプレーを見せてくれるはず。身も心も強くなった木下選手のこれからに注目したいです。

Writer /

上杉 あずさ『班長』

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