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「もう一花咲かせる」ために…山川穂高の野球人生を左右する”挑戦の日々”

上杉あずさのスコアブック
公開日:2026.07.10

ホークス移籍後、初めての2軍生活は、プロ野球人生の分岐点に──。

「新しいバッティングを作り上げていく」決意で、新たな挑戦の日々を過ごしています。6月1日に出場選手登録を抹消された山川穂高選手。降格から約1か月が経ちましたが、2軍でもなかなか快音が続きません。

「毎日、違うことをやってきた」というこの1か月は、トライアンドエラーを繰り返しています。

「”山川穂高”というバッターとして、1からスタートし直している段階なんです。だからバッティングを始めて、まだ1か月くらいの感覚」と自身の現在地を語ります。

「ファームでも打率が低いですけど、こうなることはある程度覚悟しながらやってきた。やっぱり新しいものに変えていく段階なので。もちろん、ここから先も結果が出るかどうかってのはまだ分からないですけどね」

シーズン中に大きな変化を求めるのは、簡単なことではありません。それでも、現状を打破するため、プロ野球選手として”もう一花咲かせる”ため、プロ13年目の覚悟の挑戦です。

貫いてきたホームランバッターとしての信念

最初に取り組んだのが、バットの変更でした。6月12日のファーム・リーグ 阪神タイガース戦で、山川選手は新たな”相棒候補”を手にしました。

プロ入り当初から使ってきた920gのバットを20g軽いものに変えました。近年は軽いバットを使用する選手が多いといい、自身も試してみることに。

これまでのプロ生活で「貫いてきた」バットを変えるというのは、決して軽い決断ではないはずです。

「やっぱりホームランバッターっていうのは、重くて長いバットを使うべきだって思っていたので。実際、自分の身体が元気な時は、それを振り回した方が、当たった時飛んでいた」と貫いてきた信念がありました。

しかし、「今はどちらかというと、飛ばすより、しっかりコンタクトすることを優先的にやった方がいいのかな」と考え方に変化が。

それは、「今年でもう35歳なので。これまで使ってきたバットだと、ちょっと振り回せなくなってきちゃったかなというのは感じていて。軽いバットを試しているってことです」と年齢を重ねたことや、投手の平均球速が上がったことなどを挙げ、自らも”変化を求める時”だと悟ったのです。

新バットではすぐに安打が出ましたが、自分に合うものを日々追い求め、過去の相棒も使ってみながら、試行錯誤を繰り返します。

捨てた”プライド”と新たな挑戦

ホームランバッターとしてのこだわりを持ち、プロの世界で戦ってきた山川選手にも、年齢と共に抗えないことが増えてきました。

「今までバッティングは自分で考えてずっとやってきましたけど、ちょっと感覚だけで処理できないことが多くなってきたので」と自らの”感覚”に蓋をして、第三者の意見を求めました。

山川選手が頼ったのは、菊池拓斗R&Dグループスキルコーチ(打撃)。富士大学の後輩でもある菊池コーチを「元プロ野球選手ではない中で、勉強してホークスに入ってきた人なので」と敬意を示し、科学的根拠を元に、自身の打撃を客観的に分析してもらっています。

菊池コーチも「新しい挑戦だと思います」と頷きます。

「でも、これで打者として終わりではないので。山川さん自身は多分、『本塁打を打てなくなったら引退してもいい』くらいのことを思っていたと思うんですけど、違う取り組みをしてみるという行動に出られたので」と菊池コーチも山川選手の心境の変化に寄り添います。

打撃の成績には様々な指標があります。そんな中、「山川さんはまだ手をつけてないところがいっぱいある」と菊池コーチは力を込めます。

「持ち前のバットコントロールの良さとか、選球眼の良さ、タイミングの取り方はやっぱり抜群に上手い。打者としての優秀な部分は、他の人が喉から手が出るほど欲しいものがいっぱいあるんで」

ずっとフォーカスしてきた”長打力”。 これからは、 「ホームラン狙いだけだったら生きてこなかった能力」を開花させる時なのです。

「今、1軍に俺はいらない」…冷静に受け止める現実

今までの実績が偉大であるが故に、”現在地”とのギャップも大きいですが、山川選手は真っ直ぐに現実を受け入れています。

「次、1軍に上がる時って、正木(智也)とかより打たないといけない。そう考えると、小さい『打った、打ってない』レベルで話していてもそんなに意味がなくて。今年と去年は根本的に(感覚が)ズレているので」と語ります。目先の安打に一喜一憂することはありません。

「俺は今、新しい気持ちで取り組んでいるから。まだ2軍の1番下の選手くらいの感じで思っている。だから、数字が出ないのはある意味、『作り直してるからそれはそうだよね』みたいな。だから、『早く1軍に上がりたい』という思いだけでやっても、結局それはあまり意味がなくて。来年も同じことをしちゃうし。『何か見つかった』っていう表現だと、『元々あったものに近付く』みたいな感覚になっちゃうから、そんなことではないんです」

今、山川選手がやろうとしているのは、すごく思い切りが必要なことなのです。

「だって、変わらないと。今、1軍に俺はいらないじゃない。これはひねくれて言っているわけじゃなくて、客観的にどう見ても、今は俺より打つ人がいる。例えば、正木はこのままいったら、20、30発打って地位を確立するでしょう。35、36歳になった俺がそこで戦うってなった時に、同じ成績だったら若い方を使うでしょ?だから、超えなきゃいけないって考えると、まだまだ、まだまだ……」

答えは「まだ何も見つかってない」──。

「当然、1軍で活躍するためにバッティングを研究するわけですけど。やっぱりバッティングが好きで追求し続けているところがある。ここでもうひとつ、今までの自分と違うものを極められたら、もう一花咲かせられる可能性があるんで。いい時間にしたい」

並々ならぬ覚悟とバッティングへの深い愛で、「もう一花咲かせるため」、山川選手の挑戦はまだまだ続きます。

Writer /

上杉 あずさ『班長』

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