大きな刺激が急成長を後押し。一気に支配下を勝ち取りました。
7月27日、福岡ソフトバンクホークスは張峻瑋(チャンジュンウェイ)投手と支配下契約を結びました。新しい背番号は「17」です。
「やっと支配下という目標を達成し、スタートラインに立てました。ここからもっとレベルアップしないといけないと思うので、しっかり準備してこれからの戦いに向かっていきたい」と力強く語りました。

2024年11月、ホークスに入団した台湾出身の18歳。地元で「火球男」の異名を誇る最速157キロの右の剛腕で、来日1年目の昨季は3、4軍でプレーしました。そして、今年3月にはWBC台湾代表として、日本戦でもマウンドに上がりました。吉田正尚選手、岡本和真選手、村上宗隆選手の”メジャーリーガートリオ”を打ち取るなど、春先からインパクトを残しました。2年目の今季はまさに飛躍のシーズンに──。
3月に2軍公式戦デビューすると、中継ぎとして3試合に登板。4月1日には初先発機会を得ましたが、結果を残せず、再び3軍へ。そこから約2か月が経過した5月31日の西武戦(タマスタ筑後)で2軍のマウンドに帰ってくると、6回無失点の好投で公式戦初勝利をあげました。

そして、7月9日のオリックス戦(みずほPayPay)では、1軍本拠地のマウンドに初めて立ちました。普段とはひと味違う緊張感もある中で、7回途中1失点。首脳陣も絶賛する”過去最高パフォーマンス”で、2勝目をマークしました。

翌週16日の阪神戦(丸亀)では、自己最長8回を1安打無失点。23日の中日戦(タマスタ筑後)では、3番手で登板し、5回3安打1失点で自身3連勝とする4勝目。”1つ上の段階”に入った姿を、結果で見せてきました。

明らかに変化が見られた取り組む姿勢
誰もが認める高いポテンシャルを持ちながらも、1年目は苦戦しました。力強い豪速球がありながらも、3、4軍戦で痛打されたり、制球力に不安があったりとまだまだ”成長過程”でした。
ところが、今年は2軍戦で前半戦最後の登板3試合で3連勝。結果だけを見ても、明らかな成長が感じられますが、張投手の変化は、野球への向き合い方にも大きく表れています。
目の色が変わったのは、4〜5月にかけてでした。明らかに今まで以上に集中し、長い時間練習するようになったのです。
ファーム投手陣を常に見ているR&Dグループスキルコーチ(投手)川原弘之さんは「今まで1番練習しなかった子が、1番するようになった。それくらい変わりました。全然違います」と語ります。
さらに、奥村政稔2軍投手コーチも、「全然違う」と力を込めます。昨季は3軍投手コーチとして張投手を指導してきましたが、「最近はチャンが1番最後まで残って練習している日もあるんですよ。今までそんなことなかったのに」と練習姿勢の変化に驚きます。
「チャンはウエートが嫌いだった」と明かす奥村コーチ。1年目は身体作りが大事であることを説くも、あまりウエートに前向きではなかったといいます。それが、今年は一生懸命取り組んでいるのです。
張投手は「2軍の選手と比べたら、自分はまだ小さい。そこは追いつかないといけない。よりよいパフォーマンスを出すにはフィジカルも大事だと思って、ウエートを頑張りました」と明かします。
「練習あるのみだよ。まだまだ足りない。チームメイトに差をつけられたくないので、この差を埋めるために一生懸命頑張りたい」と真っすぐに語りました。

「僕にもできる」ライバルから受けた大きな刺激
公式戦初先発となった4月1日のヤクルト戦(戸田)は、3回7失点。悪天候での登板でしたが、あまりに悔しいマウンドでした。これを最後に約2か月、2軍のマウンドから遠ざかりました。
再び3軍で腕を振る日々──。張投手は「2軍に這い上がりたい、2軍に戻ってそこからどんどん上に登っていきたい」と現状を打破しようともがいていました。
そんな時でした。5月8日、同い年の藤原大翔投手が支配下登録されました。そのあたりからです。張投手はさらにスイッチが入ったように野球と向き合うようになりました。
「藤原の支配下が大きかったみたいですよ」、「藤原が良い刺激になったのかな。張の意識が変わったんです」──。ファームのコーチやスタッフからそんな声が聞かれました。
昨季までは共に3軍で汗を流してきた仲間であり、ライバル。張投手に藤原投手が支配下登録された時のことを聞いてみると、力強い言葉が返ってきました。
「藤原にできるなら、僕にもできる。ただ這いつくばるだけさ。支配下登録期限が終わるその時まで、ずっと挑戦し続けるよ」
さらに、「支配下の選手たち、みんなに負けないように挑みたいし、彼らのようになりたい。そこを目指してずっとやってきたので、1軍に上がりたいという気持ちはすごくあります」と大きく頷きました。
言葉の端々から、今まで以上に決意の強さが感じられました。「7月末までを目標にして、絶対に支配下になりたいです」と宣言し、”有言実行”に導く素晴らしいパフォーマンス。ライバル心や取り組む意識の変化で、こうもポテンシャルを引き出してくれるのか…。もちろん、張投手が頑張ったからですが、この数か月での駆け上がりには、驚きと感動を隠せません。

変わったのは、それだけではありません。取材対応にも変化が感じられます。今までだったら、通訳不在時に、私たち(記者など)に声を掛けられると、困った表情でもじもじしていましたが、最近は自ら翻訳アプリを使用しながらコミュニケーションを取ってくれるようになりました。
朝の挨拶も、”人見知り”感満載にペコっと会釈するくらいでしたが、自分から「おはよう」と言ってくれるようになりました。
今の自分に胸を張れる、そんな様子にも受け取れました。
心身共に大きく成長した張投手が、新たな一歩を踏み出しました。これからの更なる活躍を楽しみにしています。
チャン投手、おめでとう!
