大切に心に刻みたい、”魂の会話”でした。
8月16日の午前中、ファーム本拠地「HAWKSベースボールパーク筑後」の室内練習場に、中村晃選手の姿がありました。
この日はリハビリ組が休日、3軍が8時半からの練習、2軍はナイターというスケジュール。基本的には2軍で動いている中村晃選手ですが、この日は個別調整で汗を流しました。「(2軍は)内野手も多いし、ジジイなんでね」と笑いましたが、真夏の筑後の暑さによる疲労等とも上手く向き合いながら、自身の状態を上げていました。

中村晃選手が打撃ゲージに入っていくと、マウンドに向かって歩き始めたのは、なんと斉藤和巳2軍監督でした。
2軍のアーリーワークが始まるより早い時間に室内練習場に現れた斉藤2軍監督は、ジャージ姿でマウンドへ。

突然始まったレジェンド対決──。
ただごとではない雰囲気を感じた若鷹たちも、その姿を見つめました。
時間にして、15分程だったでしょうか。2人だけの時間が流れました。バットを振り抜く中村晃選手の唸り声と打球音、時折聞かれる斉藤2軍監督の発する声が静かな室内練習場に響きました。
斉藤2軍監督直々の打撃投手に、「最初で最後かな」と中村晃選手。「魂こもってました」と2人だけの”魂の会話”を振り返ります。
森笠繁2軍打撃コーチが指揮官に「投げて下さい」と声を掛けたことで実現したというこの対決。喜んで受諾した斉藤2軍監督は、「最初で最後になるかもしれんけど、俺の思い出にさせてくれ」と中村晃選手に伝えたといいます。
ここまでプロ通算1520安打のバットマンに腕を振った、沢村賞を2度受賞した”負けないエース”。
「やっぱバットコントロールが良い。ボール球も結構あったけど、それも上手く弾いてくれたりとか、くるっと回って打ってくれたりとかして。投げている方も助かるなって。でも、あんまボール球は振らんでくれって思ったけど。最後もボール球を上手く弾いてくれて。でも、俺もそれで終わりたくないから、『晃、もう1球だけ投げさせて』って言ってね」
優しい表情で2人の「最初で最後」の時間を振り返りました。「引退することが決まっているしね。なかなかこうやって晃に投げる機会なんてないと思うから、俺がもういい思い出になった」と目尻を下げました。
今季限りでの引退を表明している中村晃選手。言葉はなくとも、ボールを介して、指揮官は選手としての凄みを再確認しました。
「もう別に技術的なところなんて、今さら何かやらないといけないことはないやん。あとは、もう1回、1軍で代打っていうところでね。しかも、(昨オフに)腰を手術して、(春先に)実戦が多くあった中で合流したわけじゃなかったから。多分感覚だけで調整して。今はある程度、2軍で打席に立ってこられた。そりゃあ、若いときに比べると、みんなちょっと落ちるところもあるけど、選球眼であったりとか、バットコントロールは健在よ。今日投げて、改めて思った。上手やなーって。芯に当てるのが上手やなーって」
しみじみと噛み締めるように語りました。
中村晃選手自身、求めるものが高いゆえに、満足や手応えを口にすることはありませんでしたが、「今年まではしっかりとプレーして」と再び1軍に戦力として上がることを目指してやってきました。
1軍は今月5日に優勝マジックが点灯。「いやもう、嬉しいですね」と首位をひた走る仲間たちの奮闘を見つめていました。

言葉の端々に”今年で最後”であることがにじむ寂しさは拭えませんが、それは積み上げてきたものが偉大だからこそ。ホークスは、9月27日に中村晃選手の引退セレモニーを実施することを発表しました。多くの人に愛され、多くの人に影響を与えてきた偉大な『背番号7』の背中を目に焼き付けたい──。
〈斉藤和巳2軍監督と中村晃選手の”魂の会話”はこちらから〉
