どんなに険しい山でも、遠回りになっても、大関友久投手はただひたむきに”山頂”を目指して登り続けています。
昨季13勝5敗で、最高勝率のタイトルを獲得する活躍を見せましたが、今季は3勝4敗、防御率5.34。思うような結果が出ず、6月13日には期限なしの再調整を言い渡されました。その後、1軍で2度登板するも、7月21日からは再びファームで腕を振る日々。
以降の2軍戦では7試合に登板し、0勝5敗。そのうち6試合で5失点以上を喫する苦しい結果でした。
見出した新たな戦い方
唯一無失点の登板となったのは、8月22日のファーム・リーグ阪神戦(SGLスタジアム)。0-0で引き分けたため、勝ち負けはつきませんでしたが、大関投手は9回4安打無失点と阪神打線を完封しました。
この試合、大きな変化がありました。それは、投球フォームの”独特な間”。ノーワインドアップから右脚を上げると、そのままグラブの右腕を出すと共にグッと3秒ほどタメをつくり、真っ直ぐ踏み出す。
元々、大関投手の投球フォームは磨き抜かれた独特な美しさがありますが、間合いというスパイスを加え、さらに変則的な投球スタイルに。
「バッターから嫌であり、こちらとしては投げ心地が良いみたいな。両方を兼ね備えている感じが大事だと思うんですよね。それが本当にいいフォーム」
新たなスタイルで挑んだ最初の登板で結果を残しました。「自分の中では明確に抑えた根拠があったというか、大事なことに気づけたというか。キッカケになる試合になったんじゃないかなと思います」と一定の手応えを口にしました。
「僕はフォームが独特なのを”武器”として置いておいたんですけど、そうじゃなくてその”武器”で戦おうと思って。みんなが『155km投げよう』とか『もっとスライダー曲がるようにしよう』ってやるのと同じように、僕は『もっとフォームを自在に操ろう』、『フォームで勝負しよう』と考えました」と思考の経緯を明かしました。
数値では表せない投手の能力に目を向けたのです。フォームの工夫により、ギリギリまでボールが見えづらかったり、球種やタイミングを予測させなかったりする「投手の打者を欺く技術」(ディセプション)を磨こうという考えでした。

立ち返った”原点”
しかし、次の登板、9月2日の中日戦(ナゴヤ球場)は6回8安打6失点と打ち込まれました。見つけたと思った光も、光り続けてはくれませんでした。続く9月13日の広島戦(タマスタ筑後)では、フォームで勝負するスタイルを一旦リセットすることに。
「この試合までの取り組みで、フォームで勝負していくっていうところまで形にしきれなかった」と模索は続きました。この試合では、ボールの力を加える方向性などを意識するも、3回までに5失点。なかなか試行錯誤が実りませんが、4回以降は”原点”に立ち返って、2回を無失点に封じました。2022年から3年程続けてきたという「左肩で引っ張る」イメージで立て直しに成功しました。また、かすかな光が──。
そのイメージを大枠としながら、「どういうバランス、リズム、タイミングで投げたらいいのかをブルペンでやってきました。そこに、バッターの打ちづらさ。僕が経験則で感じている感覚があるんです。『こんな感じで投げたらバッターは詰まるよね』みたいな。数字だけじゃない感覚も含まれてくるんです」。思考と感覚が徐々に一致してきました。
「決して2、3週間前の自分が間違っていたわけじゃなくて、角度がちょっと違う感じで入ってきていたというか、今はそんな気がします」と大関投手。どんなに小さくても、次に繋がる大切な一歩。1つずつ積み上げ、前を見続けてきました。

2軍の今季最終戦が雨天中止となったため、9月30日の3軍戦に登板。「引き続きいろいろ試してやっていて、丸っきり違うことではなく、いいと思っていることを続けた感じです。あんまり考えすぎずに、自分にとって大切だと思うことを、『どうしたらもっと良くなるかな』って考えながら。ただ、いい部分と上手くいかない部分というのはやっぱり出ちゃったかなと思います」と振り返ります。
「2軍でもひたすらいろんなことをやってみたり、良いものを再確認したりとかやりながらも、結局結果がついてこなかった。何か1つに原因があるっていう考え方はやめようと思っています。もう1回、全てのことを見直していくというか、そういうスタンスが大事なのかなっていう気がしました」

大関流の”山の登り方”
まだまだ模索の途中ですが、信じる”頂”に向かって1歩ずつ前進しています。
「見失ってはいないと思います。そこはブレてないかな」
自分自身を見失ってもおかしくないくらい、上手くいかないことが多かったシーズン。それでも、心に秘める大きな目標はブレることはありませんでした。
「野球やってて、自分を見失うのは良くないと思う。ただ目の前のことを一生懸命やるだけでは上手くいかないので、自分がいきたい方向性とか、こうなりたいみたいな自分の夢だったりとか、そういうのを大事にしながら、今できることを1つ1つしっかりやっていこうと思います」
敢えて口にはしませんが、先にある大きな夢。以前は、そこからの逆算を意識していた大関投手ですが、その考え方にも変化が見られました。
「今は逆算を過度に意識せずに、本当に自分が目指したいところに対して、今できることをシンプルな逆算としてやっています」
これまでは大きな夢や目標に向けて、逆算でアプローチしてきましたが、今季行き詰まったことで、改めて考えを巡らせました。
「逆算、逆算でここ2、3年は上手くいっていたし、それを続けてきたんですけど、すごく大きな山を登る上で、『逆算してから行きましょう』だけでやっていると、自分の良さが出ていない気がして。全部逆算じゃなくて、一歩一歩進みながら逆算することが大事なのかな」としっくりくる考え方を見つけました。
さらに、登山に例えてこう語ります。
「上手く登れないんだったら、ルートを変えればいい。一歩踏み出すことの重要性を最近、思い出して。踏み出すうちに、どうやら逆算もでき始める、みたいな。『次の一歩は何だ』ってやっているうちに上昇気流に乗っていく、みたいなイメージです」
自分なりの目標との向き合い方を、熱を込めて語りました。

「今年1年、すごく早かったですね。一番早かったかもしれないです。目の前のことに必死になって、集中してやっていくうちに1年が過ぎてしまった。あんまり良くない過ぎ方な気もしますけど、そういうのも受け入れてやっていくしかない。悔しさもありますし、このままでは終わせないぞという感じですかね。シーズンは終わっちゃいますけど、自分の中で燃えてはいます。1つ1つのレベルを上げていって、またいい姿を見せられるように、変わらずやっていきます」
結果の世界であることは重々承知ですが、大きな目標があるからこそ、大関投手は立ち止まることなく、新たな思考や投球を見出し続けているのです。
小さくともたしかな一歩で”全新”し続けたら、きっと上昇気流に乗って──。いつの日か、大きな目標からの”逆算”と出会う瞬間を心待ちにしています。
