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18歳で潰えた夢を胸に…外国人育成の鍵を握る”JD効果”

上杉あずさのスコアブック
公開日:2026.09.24

たしかな成長を後押ししているのは、18歳で”異例の挑戦”をした熱血コーチでした。大きな存在が育成外国人選手の才能開花に一躍買っているのです。

今年3月、ホークスはホセ・ダニエル・オスーナ氏を外国人育成打撃コーチとして招へいすることを発表しました。育成外国人選手の打撃技術向上を目的として、3回(21日~4月9日、5月26日~6月14日、9月11日~30日)にわたって来日。

オスーナ氏は、ドミニカ共和国出身の37歳で、ラテンアメリカの著名アカデミー「Ozuna Baseball Academy」の代表兼コーチ。これまで150名以上のプロ野球選手を輩出し、現在も複数の現役メジャーリーガーのパーソナル打撃コーチを務めるなど、信頼と実績を積み上げてきた方です。

そんなオスーナコーチ(愛称:JDコーチ、JDさん)がチームの輪に加わってから、明らかな変化がありました。育成外国人野手の成長が目覚しいのです。

能力とやる気を引き出す指導

来日4年目のホセ・オスーナ外野手(19)は、これまで2軍ではなかなか結果を残せていませんでしたが、春先からJDコーチの指導を受け、2軍で頭角を現しました。その後、怪我で離脱してしまいましたが、8月19日からの3軍戦で実戦復帰すると、関東遠征14試合で5本塁打と打ちまくりました。

オスーナ選手は「JDからアドバイスをもらったのがすごく大きかった。バッティングのコツとかについて良い助言をくれたんだ。今はそれを実践できている。それと、前よりリラックスできていると思う。あまり深く考えすぎず、不安にならずに良いメンタルで打てるようになったんだ」と頷きます。

バット軌道や構えの時の力感、メンタル面のアドバイスがオスーナ選手にハマったようです。まさに”JD効果”でした。

16歳で来日した3年目のデービッド・アルモンテ内野手(18)も毎年成長を見せています。JDコーチの指導を受け、「いろんな練習をしています。どれも自分にとってプラスになっています」と様々な練習法に取り組んできました。「トレーニングもとてもよく、他の外国人選手たちにとっても助けになっていて貴重な経験です」と手応えを口にします。JDコーチが帯同した今回の3軍四国遠征でも、安打を量産しました。

また、JDコーチが来てから、彼らは今まで以上に練習に熱心になりました。明らかに練習時間が長くなったのです。

オスーナ選手は「野球することに対するモチベーションが上がったんだ。いろいろ経験を積んできて、より野球を楽しめているというのもあると思いますし、しっかり練習して、もっと経験を積むことが1番良いと思うようになったので、今はこういうモチベーションでやれているのかな」と笑いました。

アルモンテ選手も「人生で1番練習している」と充実感を滲ませました。「結果を出したいなら、努力しないといけない。それだけの時間と練習量が必要なので、しっかり取り組みます」と力強く語ります。JDコーチも「スーパースターになれるような素材」と太鼓判を押しました。

彼らのポテンシャルのみならず、やる気まで引き出すJDコーチ。大切にしている指導法は、1人ひとりに寄り添うことでした。

「選手それぞれで抱えている問題が違いますから。その選手が置かれている状況に合わせてアプローチを変える必要があります。選手たちの持つ能力を最大限に引き出すために、まずは自分の教え子たちを深く知ることに時間を割かなければいけないんです」と語ります。

実は、オスーナ選手とアルモンテ選手は、中学生の頃からJDコーチのアカデミーに通っていたそうです。異国の地で、性格面も成長過程も知ってくれているコーチに指導してもらえることは、彼らにとっても大きなことなのです。

さらに、その熱意とフレンドリーな人柄に惹き込まれるように多くの日本人選手たちもJDコーチに助言を求めました。みんなが頼りたくなる存在なのです。

18歳の大きな決断、若き日の覚悟

信頼関係を築きながら実力を引き出す指導力で、数々の実績を積み上げてきたJDコーチ。若くして成り上がった実力者ですが、決して最初から上手くいったわけではありません。

今から約20年前のこと。JDコーチは18歳の頃に「Ozuna Baseball Academy」を立ち上げました。

「最初はキツかったですね。本当に大変でした。『若造に何ができるのか』と多くの人に信用されませんでした。だから本当にやってやろうっていう気持ちでここまできました」

プロ経験のない18歳の”異例の挑戦”でした。若くして、大きな決意をしたJDコーチの思いとは──。

「本当は僕自身がメジャーリーガーになりたかったんです。でも、その夢が潰えたんで、今度は指導者としてたくさんの選手をメジャーリーグに輩出したいと思ってアカデミーを作りました」

「自分が選手として無理なら、他の子どもたちが夢の扉を開くための手助けをしようと切り替えました。もちろん、アカデミーを運営する以上、たくさんの選手をプロ契約させたいという気持ちは常にありました」

若くして、覚悟を持って夢を切り替えたJDコーチ。だからこそ、その情熱は多くの選手へと伝わり、今ではラテンアメリカ有数の人気アカデミーへと成長を遂げたのでしょう。1人で立ち上げたアカデミーも、現在は約25名のコーチやスタッフを抱える大所帯になりました。

整いつつある育成サイクルに欠かせない存在

ホークスは2017年にリバン・モイネロ投手とオスカー・コラス選手を育成で獲得。モイネロ投手は来日1か月足らずで支配下登録され、チームに欠かせない存在に。その後、2022年からは若い外国人選手を獲得し、本格的に育成するようになりました。メキシコからアレクサンダー・アルメンタ投手が入団。そして、ドミニカからマイロン・フェリックス投手、マルコ・シモン選手、フランケリー・ヘラルディーノ選手がホークスに加わりましたが、彼らも「Ozuna Baseball Academy」の塾生でした。

モイネロ投手を発掘したことでも知られるホークスの中南米スカウト・萩原健太氏が同アカデミーを訪ねると、素晴らしい才能を持った選手がたくさんいたといいます。そして、国際部デスクの上田徹平氏と共に足を運び、好素材の選手たちとたしかな指導力を持つJDコーチを”スカウト”するに至ったのです。

昨オフ、ドミニカを訪ねた萩原健太スカウト(左から4人目)と上田徹平デスク(右から5人目)、右からJDコーチ、オスーナ選手、国際部松本氏、アルモンテ選手(写真中央)、左からゲレーロ通訳、3人目はロドリゲス選手

JDコーチの来日中は、間違いなく選手たちのパフォーマンスが上がり、モチベーションも高まります。もちろん、言葉が通じることにより、細かい指導やニュアンス表現が可能になったり、安心感が生まれるという利点も大きいのです。エミール・セラーノ・プレンサ選手も、JDコーチ帯同中の3軍四国遠征中に豪快な本塁打を2本放ちました。今年加入したキューバ出身のジョナサン・モレノ選手は、「言葉が通じるのは分かりやすくて良い」とJDコーチの存在に感謝します。

言葉が通じるという点では、外国人育成投手が急成長した背景にはフェリペ・ナテル投手コーチの加入がありました。アレクサンダー・アルメンタ投手とルイス・ロドリゲス投手は口を揃えて、支配下登録を掴むきっかけをくれたナテルコーチに感謝を語りました。

若き才能ある無名の外国人選手を獲得し、育成していくというホークスのサイクルも整ってきました。外国人育成コーチの存在が、そのメカニズムをさらに強固なものにしてくれそうです。

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Writer /

上杉 あずさ『班長』

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