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「まだ、諦めきれない」ホークスで刻んだ6年間の財産と決意

上杉あずさのスコアブック
公開日:2026.11.04

「まだ、諦めきれない」──。
福岡ソフトバンクホークスで過ごした6年間を胸に、牧原巧汰捕手は挑み続けます。

10月26日、球団から来季の育成契約を結ばないことを通達されました。2020年ドラフト3位で日大藤沢高校からホークスに入団した強肩強打の捕手。広角に打ち分ける打撃センスが魅力的でした。

高卒ながら、1年目から2軍戦で出場機会を得ました。当時の藤本博史2軍監督も、ドラフト1位の井上朋也選手らと共に度々期待感を語っていたのが印象的です。

牧原捕手は、当時を振り返ります。「衝撃だったのは、2軍で千賀(滉大)さんとバッテリーを組ませてもらったこと。プロってエグいなと思った。1軍投手が僕を目がけて投げてくれる、というのが新鮮で。 東浜巨さんや石川柊太さんなど、ホークスを背負っているピッチャーとも1年目からバッテリー組めたっていうのはすごく衝撃的で、18歳の僕には良い経験でした」と忘れられない貴重な機会でした。

思い返せば、悩んだ末に決断した高卒でのプロ志望。6年前の2020年はコロナ禍真っ只中でした。高校球児の最大の目標、夏の甲子園は中止になり、アピールの場も激減。プロ志望届を提出するべきか、大学進学か、社会人野球へ進むか、悩みに悩みました。それでも、高卒でプロへの道を志し、ホークスからドラフト指名を受けました。

結果的に6年間で、1軍出場は叶いませんでしたが、後悔はありません。「(その選択は)間違っていなかったなと。野球だけを考える生活がすごく濃い時間でした」と思えるのは、数々のかけがえのない経験を経て、成長した自分を実感しているから。

「そこが1番成長しました」と語るのは、捕手としての自分。

高校時代や1、2年目くらいまでは「バッティングのことしか考えていなかった」。プロの世界で経験を積み、学ぶ中で、捕手というポジションへの向き合い方も変化していきました。考える力がつき、視野は広がりました。捕手のスキルアップにも精力的に取り組み、「元から好きでしたけど、もっと濃いというか、奥深さを知った」と捕手への思いを強くしました。

ただ、最後の2年間は苦しみました。本来の持ち味である打力も思うように発揮出来ず、もがきました。「自分の持ち味である勢いをそのまま出せずに、考えながらやっていた感じがあって。変に考えすぎたなっていうのは、ちょっと悔いが残ります」と唇を噛みました。

育成選手として再出発した今年は、1月にかねてより憧れてきた甲斐拓也捕手に弟子入り。充実した自主トレを経て、気持ち新たに挑んだシーズンでした。しかし、シーズン後半からは「こんなんじゃ野球人生終わっちゃう」と危機感も悪い方に作用してしまいました。

そして、オフに突きつけられた厳しい現実──。ホークスを去ることになり、次の道を模索している牧原捕手。「まだまだ全然やれる。こんなんで終わりたくない。やり残したことしかないです。守備もバッティングも」と悔しさと現役続行への思いを強く語りました。

希望になった同期の存在

まだまだ野球を続けたい思いがある中で、励みになっているのは、同期の存在でした。

牧原捕手のドラフト同期は全員高卒でした。ドラフト4位入団の川原田純平選手は、4年目オフに育成となりました。5年目の昨季も結果を残すことはできず、2年連続でホークスから戦力外通告を受けました。しかし、トライアウトで結果を残すと、巨人から育成契約のオファーを受けました。トライアウトからNPBでの再契約を勝ち取るという”狭き門”を突破した川原田選手は、今季2軍で3割を超える打率をマーク。新天地で奮闘しています。

「自分がトライアウトに挑戦したいっていうのも、現役でやりたいっていうのも、やっぱり(川原田)純平の存在は結構大きくて。純平の姿を見ると、諦めきれないし、最後までやれることは全部やって、もう諦めがつくまでやりたいと思います。刺激になりますね」

さらに、今季は同期のドラフト1位・井上選手がシーズン途中にトレードで横浜DeNAへ。今年8月、ファーム交流戦で対戦した時に再会。「朋也も急に違うチームにいったけど、2軍で試合したときに、すごくのびのびやっていた。球団が変わると、こんなに変わるんだと思った」と豹変っぷりを感じました。井上選手自身も、環境の変化がもたらす気持ちの変化を実感していたといいます。1軍でチャンスを掴めずにもがいていた同期は、移籍先で活躍し、”古巣”との日本シリーズにも出場しました。

同期たちの活躍は、牧原捕手にとって、大きな刺激になりました。

次のチャンスを掴むことが出来れば、新しい自分に出会えるかもしれない──。

「まだまだ全然やれる。こんなんで終わりたくない」

同期の活躍も励みに奮い立つ牧原捕手は、「自分がやるだけ。結果を残すっていうのは、どこにいっても変わらない。そこだけは変えず、やっていきたい」と黙々と練習を続ける日々です。

良い経験も悔しい経験も糧に、新たな環境で才能開花するチャンスを──。牧原捕手に新たな道が開けますように。

Writer /

上杉 あずさ『班長』

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